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「ま、いっか」
キスしたオレをじっと見つめてから、ふ、と笑って。
オレの脇に手を入れて、ルカがまた、ひょいとオレを抱え上げた。
「お前、本当に、どうやって来たんだろうな」
抱き上げたオレを見あげて、そんな風に言って、笑う。
「――――……もし魔王が本当に同じ感じで来てるなら、あいつかなり長く居るし、お前が一瞬で消えて無くなるって事は、無さそうだよな」
ふ、と目を細めて。
「別の意味でも、ほんとに早く魔王探さねえとって感じだな」
ちゅ、とキスされて。
とん、と下に降ろされた。
「お前が消えないって分かるなら、どこから来ようが、誰の仲間で誰と関係があろうが、オレには関係ねえんだけどな」
その言葉に、ちょっと気になって。
「オレがもし、魔王の仲間だったら?」
「ん? そーなのか?」
「ううん、魔王なんて、知らないけど。でも知らない内に、関わりがあったとか。そういうのだったら?」
「……別に。完全に仲間だと少し困るけど。関わりがある程度なら関係ない。お前がここに居るなら、どーでもいい」
「……ルカって、オレがここに居れば、なんでもいいの?」
「良いって言ってんだろ?」
「――――……」
「お前がのんきそうな顔して、笑ってれば、なんでもいーぞ」
「――――……」
そんな言葉に、胸の奥が、熱くなる。
ルカって。なんでか分かんないけど、本当にオレと一緒に居たいのかあ。
オレが魔王と関係あってもいいとか、そこまで聞くと、ちょっと驚く。
「ソラ、こっち来な」
手を引かれて、屋上の端に行くと、すぐ下に塔が見える。
「今屋上に居るここが、4階建て、で、西塔と東塔があって、全部、地下がある」
「うわー。すっごい広いね」
「あと、むこうに海が見えるの分かるか?」
「うん、遠くに見える」
「ずーっと川が続いてて、城の近くまで船が来れるようになってる。造船所があるから、アランが船作りに来たって言ってたのは、そこだな」
「へー……」
「あと、東の塔の地下は牢だ。今は誰も入ってないねえと思うけど」
「うん」
それは覚えてるような気がする。
「厨房があって、宝物庫や医務室や書物庫と……あと研究室なんかもあるぞ」
「研究室って?」
「薬や魔法を研究してる。……たまに出火したり煙出したりするから、そこだけ別建物。ここの下に、見える?」
乗り出して見下ろすと。確かに一軒、かなり離れて別に建ってる屋根が見える。
「あと、町には、武器、防具、アクセサリー、服とか鍛冶屋、とにかく色んな店があって、他の町の何倍も品ぞろえはあると思うから、買い物も楽しいだろうけど」
もう、なんか、聞いてるだけで、
ワクワクしかないんですけど。
ルカは、オレの顔を見て、ぷ、と笑いながら、頬に手をかけてくる。
「どこが見たい? 特にないなら、屋上から、一階ずつ降りてくけど?」
ん?と、少し首を傾げながら、オレを見つめる。
「――――……色んなとこ、いっぱい、見たいんだけど……」
「けど?」
「宝物庫が見たい―!」
「ああ、なるほど……」
クッと笑いながら、ルカが歩き出す。
「良いぜ、来いよ」
「うん」
ワクワク。宝物ってなんだろう。金銀財宝? ワクワク。
「盗むなよー?」
「盗まないよ。盗んだって、それでオレ、何すんの」
「盗んだら、牢屋行きな?」
「あっ牢屋も見たい!」
「何。行きたいの?」
「うん、見てみたい」
だって、牢屋なんて、滅多に見れるものじゃないような。
「じゃあ宝物庫で何か盗んで、牢屋行きって事で」
「盗まないけど連れてってよ」
「鎖にソラ、つなぐってのも――――……ちょっと興奮すんな?」
「え」
一瞬何言われてるのか分からなくて、ルカを見上げて。
ニヤ、と笑うルカに、意味が分かって、完全に赤面。
「……っ変態ルカ……」
「動けないソラ、泣かすのもいいなー」
「……っっっっ」
ドン引きして、ルカから身を引いてるオレに、クッと笑いながら。
腰に回ってきた手に、ぐい、と引き寄せられる。
「冗談だよ」
「……冗談に聞こえないんだよ」
「あーそう? まあ、本当にしてほしいなら、いつでもするけど」
「して欲しいなんて言ってないしー!」
もう、離せー、と腰にある手を離そうとするけれど。
全然手は緩まない。
「抱いてる時に、お前に抱き付かれんのが好きだから繋がねえよ?」
ぷ、と笑いながら、ルカはオレの肩に手を乗せて、引き寄せて、歩き出す。
「…………」
抱き付かれるのが好きって。
そうですか……。
「……重いから、離して?」
肩にかかってるルカの手から逃れようとすると。
「……繋ぐけど。逃げると」
「――――……」
ぴた。
動きを止めたオレに、ルカはめちゃくちゃ楽しそうに笑う。
「……もー」
何なんだ、もう。からかってばっかり。
そう、思うんだけど。
――――……まいっか。と思う位には。
ルカが、ただただ楽しそうなのは、嬉しい。のかもしれない。
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