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「隣に」
「うっわー、すごい!」
ルカに連れてこられたのは、城の屋上。
他に高い建物が無いから、ものすっごく遠くまで見晴らせるし、下を見れば城下町。人がちっちゃい。
「ここ、すごいね。山の頂上にいるみたい」
「見晴らし、良いだろ」
「うん。すごい」
すごいしか、出てこない。
「お前の世界には無いのか、こういうとこ」
「んー……オレの世界の方が、高い建物がいっぱいあるんだよ。だから、こんなに空が広くないし……お城なんて、無いよ」
「城じゃない高い建物がいっぱい?」
「うん。んー……」
足元に砂がすこし積もってる。
指先で、四角いビルの絵を描いてみる。
「こういう四角いでっかい建物がいっぱい建ってる」
「ふうん……?」
「ルカがオレの世界に行ったら、目立つと思う」
「何で?」
「あんまり居ないから」
ルカを見上げると。
「どーいう意味?」
しゃがんでるオレを見下ろして、くす、と笑う。
「見た目も目立つし。こんな偉そうな人いないかな……」
「偉そうって何だよ」
ふ、と笑いながら、ルカがオレの手を引いて、立たせる。
「偉そうでしょ」
「そうか?」
「そうだよ」
「まあ……偉いからな?」
「――――……そうだね」
くす、と笑ってしまう。
ルカっぽいな。
ルカは、オレの頬に触れて、何だかちょっとムッとした。
「……なに??」
「――――……やっぱりあんま情報無かったな」
「……?」
「他の世界、聞いた事ねえから、そうかもしれないとは思ってたけど」
「ああ……うん」
「魔王が現れた時と一緒って言われても、魔王に聞けないしな」
「うん……」
……魔王も、どこか違う世界から来たって事、なのかなあ。
――――……オレと同じ世界から? でもなあ。オレ、あんな人、知らないし。関わりは無いもんな。もし魔王に話が聞けても、お互い飛んできたんだねあっはっは、で終わる気がする……。
ああ、でも――――……もしそうなら、夢でないって事だけは、確定するのかな。でもどっちにしても……。
「――――……まあ今んとこ大した情報はねえけど」
「……っぅわ」
ひょい、と抱き上げられて。
ちょっとびっくりしたまま。面白そうに笑ってるルカを見下ろす。
「何にしても、側に居させるし、居なくなったら探すから、覚えとけよ」
「――――……うん。わかった」
「ソラ」
とん、と地面に降ろされて。
今度は、ルカを見上げると。まっすぐに、真剣に、見つめられる。
「どこから何で連れてこられたか分かんねえけど」
「――――……」
「……今お前、居なくなったら……」
「――――……」
「……居なくなったら――――……」
「……居なく、なったら?」
ドキドキ。
居なくなったら、何だろう。
「……居なくなっても、まあ死にはしねえか。 んー。泣く……泣かねえかな。……何だろうな」
「……っ」
何だそれ、からかってんの??
マジメにドキドキして聞いてたのにー!
「あー待て待て、怒んな」
くー離せー!
ぐいと腕を引かれて、すぽ、と抱き締められた。
「――――……死なねえし、泣きはしねえけど」
「…………っ」
まだ言うのっ もう、何なんだっ!
居なくなったら死んじゃうとか、居なくなったら泣いちゃうとか、嘘でも言っといてくれたらいいのに。……って、絶対ルカはそんなタイプじゃないの、分かってるけどっ……!
「……ソラを見つけるまで、何があっても、どんな手ぇ使っても、探す」
「――――……」
「絶対、探す」
「……見つからなかったら?」
「オレが死ぬまで、ずっと探すから、ソラも絶対ぇ忘れんなよ」
「――――……」
「返事は?」
ムカついてたのの反転。
なんか泣きそうになって。
声が、出なくて。
黙ったまま、頷いたら。
ふ、と笑ったルカが。
「オレ、お前が隣に居ねえの、無理だから」
……無理?
――――……オレが、隣に居ないのは、無理?
「――――……も、いい、分かった」
――――……なんか、ほんとに、泣きそう。
ふ、と息をついてから。
ルカの胸元の服、掴んで、少し引いて。
黙ったまま。
キス、した。
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