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「いつものルカ」

「――――……閉めるぞ?」 「うん」  ルカが宝物庫を閉める。   「ありがと。おもしろかった!」 「オレは――――……寿命縮んだけどな」 「え?」 「うちわ」 「あ。ごめん」  ふ、と笑いながら、ルカの手がオレの頭に掛かって、引き寄せられる。  広い廊下を、なんだかものすごーく密着しながら歩く。 「次、牢屋見たいんだったか?」 「うん。ちょっと怖い?」 「別に今誰も入ってねーから怖くはねえと思うけど」 「そっか。ていうか、誰も入ってないの?」 「ああ」 「……つかまえとくような、悪い人、居ないの???」 「一時、入れる事はあるけどな。すぐ処分は決まるから、ずっと入ってる事とかはねえよ」 「――――……処分て?」 「まあ色々。やった事に応じて決まってる」  そんな話をしながら、隣の塔にうつって、地下に降りる。  当然だけど、華美な装飾は無くて、石の階段。中はひんやりしてて。  先に降りていくルカに遅れないようについていく。  鍵を開けて入った先は、ゲームとかでよく見る、牢屋。 「――――……」 「感想は?」 「画面でよく見た事ある感じ」 「画面?」 「うん。あの……そういうのを見れる、箱というか」 「ふーん……入ってみるか?」 「いいの?」 「……いいよ。つか、入りたい奴がいるとは思わなかった」 「オレだって、捕まって入れられるのは嫌だけど」  苦笑いしつつ、牢屋の入り口をくぐって、中に入る。  奥の壁に、手錠が繋がった鎖が刺さっていて。  じゃら、と重い鉄の鎖と、手錠に触れる。 「――――……」  ……なんか、すごい。不思議。本物の牢屋に居るとか。  牢屋の外から、オレを見てるルカに、鉄格子越しに近付いて。 「……ルカ、助けて」  と、思わず言ってみる。  何言ってんだ、とルカが笑う。  鉄格子に、ぎゅ、と捕まってみると。笑いながら、ルカがオレの手に触れる。  ――――……こういう事すると、自然にこうしたくなるものなのかな。  別にほんとに捕まってる訳じゃなくて、端のとこから外に出られるのに。 「なんか、これ越しって、不思議だね」 「ん?」 「触れられるのに、これ以上近寄れないって」 「――――……」  牢屋越しで、大事な人と対面する事を、テレビとかで、見た事があるような気がする。  ――――……何となく、こんな感覚なのかなーと、変なとこで実感。 「――――……出てこいよソラ」  ルカが不意にそう言った。  ――――……何か、オレもちょっと意味不明に切なくなっていたので、言われるまま、すぐに牢屋を出た。すると、出た所で待っていたルカが、急にオレを、抱き締めた。 「……ルカ?」 「――――……ソラ」 「――――……」 「絶対、離れンなよ」 「――――……」  何言ってんの。  ……こんな、鉄格子1枚、冗談で隔てただけで。  そんな事。言っちゃうとか。  ――――……冗談にしようかと一瞬、思ったけど。  なんだか、触れたいけど触れられないとか思った、さっきの感覚。  ――――……オレとルカって。  ほんとなら触れ合ってる関係じゃなかったんじゃないのかなって。  思ってしまったから。 「――――……」  ぎゅ、ときつく抱きしめられてるこの感覚。  いつまでこんな風にしていられるのかなと、少し切なくなって。 「――――……」  ルカもオレを抱き締めているだけで、キスもしないし、何も言わない。  ……何、考えてるんだろ。  しばらくそのままで。  ――――……そしたら、ルカが不意に、クッと笑い出した。 「……柄じゃねえか」 「……ルカ?」 「離れても引き戻すから。関係ねーな」  強い口調で言って、ルカはオレを見つめて、ふ、と笑った。  さっきの、一瞬見せた、眉を顰めた表情は、もう無い。  いつもの、ルカ。 「な、ソラ?」 「――――……うん」  嬉しくなって、オレは、自然と笑顔になって、頷いた。  見つめ合ったまま、触れてきたキスに、瞳を伏せた。 「――――……」  キスが離れて、見つめ合う。  もともと触れ合うはずじゃなかったとしても、今は、ちゃんと触れ合ってる。  ――――……離れても、探してくれるって、言ってくれてる。     何も分からない今は。  それだけで、いいや。 「次どこが見たい?」 「んーー。厨房ーー」  答えると、ああ、と笑って。 「いこうぜ」  腕を引かれて、一緒に歩き始めた。

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