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「大事ってこと」
城の中はとにかくめちゃくちゃ広くて、人がいっぱい居た。
大事な所にはすぐに辿り着けないように入り組んでるらしくて、もうそれはそれは、めっちゃ歩いた。
「結構見て回ったけど。もういいか?」
「うん。今はもういい……つかさ、ルカは疲れないの? オレもう、すごく疲れた」
「旅してる時とか、もっと歩くからな。つか、軟弱だな、ソラ」
「……もしかして、リアも結構歩くの?」
「リアのがお前よりよっぽど歩けるんじゃねえの」
「――――……その内鍛えます……」
「その内って。鍛える気、ねーだろ」
クスクス笑われながら。
一旦城を出る事になった。
外から見ると、でっかくて、なんか真四角みたいに見えるのに。
なんか、この中が、あんなに入り組んでるとか。
すごい不思議。
「ねー、ルカ、そういえばさ」
「ん?」
「船ってさ、日帰り?」
「いや。分かんねえな。どこに何がいるんだか分かんねえし」
「船の中に、泊まるの?」
「そうなるな。あの船、それ用にもできてたぞ」
「そうなんだ」
「何日か過ごして……食料とかも積んでくから。あ、ソラ」
「うん?」
「飯、作れよ」
「ん?」
「保存のきくものとか中心に、色々積んでって、船の中で調理。出来るか?」
「え」
頭の中で、ルカが言った事を色々考えて。
「じゃあ、ジェイとかにも聞いて、色々持ち込む物とか、食材とか、確かめていい?」
「良いに決まってるだろ」
オレが嬉しくなって聞くと、ルカも何だか嬉しそうな。面白そうな顔でそう言う。
「まだ料理してないから、こっちの食べ物がよく分かんないんだけど」
……みんな茶色になってるし。もとは何色なんだろうってとこから、よく分からないし。
「じゃあ明日帰ったら、ジェイとそこら辺は色々話して教えてもらえよ」
「うん!」
わあ。なんか。
船の旅とか。オレ、正直、邪魔なだけなんじゃないかと思っていたから。
やる事できるって。
しかも皆のご飯の用意するって。
すっごい嬉しいかもしれない。
「――――……」
足取りまで軽くなって、ウキウキ歩いていると、ふ、とオレを見下ろしたルカに、笑われて。
「……何?」
「元気になったな?」
「あ。うん。なったかも」
言うと、クスクス笑われて。
「だって、なんかいっつもさ、助けられてばっかな気がするから」
「――――……」
「ご飯作れるって、助けてる事になるよね?」
「ん。すげーなる。うまければ、なおさら」
「頑張る!」
なんかもう、楽しくてしょうがない気分になってきて、早くジェイの所に行きたいなあ、なんて思っていたら。
ぐい、と引かれて、ルカの腕の中。
「え?」
またしても、城から町へ続く、道のど真ん中、なんですけど。
そんなに人は居ないけど。
「ルカ?」
「お前さ、別に料理しなくても」
「うん?」
「ソラが居るだけで、オレ、元気になるけど?」
「――――……」
「……お前が居ない時も、別につまんなかった訳じゃねえけどな。でも、リアもキースもゴウも、お前が来てから、楽しそうだし」
「――――……」
「お前のことが大事だから助けるんだし」
「――――……」
「助けられてばっかりとか、言うなよな」
まっすぐな瞳で見つめられて、そんな風に言われて。
どく、と心臓が弾む。――――……絶対今、ものすごい、喜んでる。オレ。
ふ、と笑んだルカに、ちゅ、とキスされる。
「な?」
「――――……うん」
うわ。
なんかオレ。
ちょっと泣きそうな位。
嬉しい、かもしれない。
「あーまたくっついてるー」
少し離れた所から、リアの声。駆け寄ってくる足音がして、振り返る。
「ほんと常にひっついてるな」
「見慣れたよね」
ゴウとキースも笑いながら、言う。
「ソラ、なんか嬉しそう」
リアはいつでも鋭くて、オレ見てすぐそんな風に言って笑う。
「ミウが広場で子供達に思い切りモフモフ撫でられてたよ」
キースがクスクス笑う。
「宴の準備も進んでるから、お前ら探しに来たんだよ」
ゴウが言うと、「じゃあ行こうぜ」とルカが歩き出しながら、オレを振り返る。
――――……会ってそんなに経たないのに。
オレ、皆が、すごく、大事になってる。
ほんと不思議だけど。
皆が、大好きって事だけは、分かる。
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