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「褒めてないし」

   広場って……ほんとに広いな。芝生の先が遠い。  オレ達が芝生に入ると、子供達に囲まれてたミウが、ふわふわとオレの所に飛んできた。  すっぽり腕の中に納まると。子供達も付いてきた。  あっという間に子供達に取り囲まれる。 「うわー、お兄ちゃんのミウなのー?」  なんか色んな所で同じ事を聞かれるような。  めちゃくちゃ取り囲まれてるオレを、子供たちの向こうで、ルカ達皆が少し離れた所から見てる。  えーと。オレも、そっちに居たい。  ミウ、子供達と遊んでくれてていいのだけど。と思うけど。  何だか物凄くすっぽり埋まってるので、今まで子供達と遊んでて、疲れたのかもしれないなーと思い、よしよし、と撫でると。なんだか嬉しそうにスリスリ寄ってくる。  それを見て、子供達が皆、いーなー、かわいーーー!と叫んでる。  うん、分かる。  ミウ、可愛いよね。 「優しく撫でてあげてねー」  子供達に言いながら、ミウの背中を差し出すと。  よしよし、と皆が順番に撫でてる。  背中くらいなら、ミウが疲れてても大丈夫かな、なんて思いながら。  ふと、ルカ達に視線を向けると、なんか皆、クスクス笑ってる。    あれは、何に笑ってるのかなあ。  オレが子供達に埋まってるから笑ってるのか。オレが子供達と同レベルに見えるからって笑ってるのか。なんて思って、思わず苦笑していると。  ルカ達の所にレジーがやってきた。  何でそんな所に止まってるのか、聞かれてるっぽい。で、ルカが、笑いながら、オレを指さしてる。レジーは、子供達に囲まれて、ミウと動けなくなってるオレに気付くと、スタスタとこっちに歩いてきた。 「ほら、皆、ソラは用事があるから。ミウとはまた後で遊ばせてもらって。一旦お家に帰りなさい」  レジーがそう言うと、子供達は、一斉に「はーい」と走り去っていった。  おお。すごい。  一言で、あんなに群がってる子供たちを動かすとか。 「――――……魔法を教えたりしているので。それで言う事を聞くんですよ」 「え?」  くす、とレジーに笑われて。顔を見ると。 「言う事聞かせられてすごいなー、と思ってたでしょう?」 「――――……」  何で分かるんだ。と思いながら、うん、と頷くと。 「何で分かったんだと思ってますか?」 「――――……」  心読まれてる??  そんな魔法もあるのかな? 「心を読むような魔法はありませんよ」 「!!」  さすがにびっくりして、レジーを二度見してると。  レジーは、可笑しそうに笑い始めた。 「なんだか、顔に出すぎですね」 「……そんなにですか??」  多少顔に出るかもしれないけど、それよりレジーが鋭すぎるからじゃないのかな。 「可愛いだろ、すげえ分かりやすくて」  ルカ達も近寄って来てたんだけど、ルカはそんな風に言いながら、オレの頭をぐりぐり撫でる。 「それ褒めてない。バカにしてるし」 「褒めてるだろ、可愛いって」 「絶対褒めてない」  ぐりぐり撫でられて、そのまま両頬を挟まれて引き寄せられる。 「可愛いって言ってる」  クスクス笑うルカに、むー、と睨んでると。  ふ、と笑ったルカが、ちゅ、と頬にキスしてくる。 「……………っっ」  だから、皆の目の前でっ!  今更だって言われそうだけど、やっぱり咄嗟にされると、顔は熱いし、やっぱやだ!!  見せるものじゃないー!!  声にならない声で抵抗して、ルカを離そうと藻掻いていると。  ルカが可笑しそうに笑って、オレの肩に腕を回して、抱き寄せる。 「照れるなよ」 「照れてるんじゃ、なくて――――……」  キスされる。――――……というより、黙らされた。というのが正しい。 「……っっもう、離……」  抱っこしてたミウがほわんと飛んでしまうし。  なので、もう心置きなく、じたばた暴れてると、ルカがクスクス笑いながらオレの頭をよしよし撫でた。 「王子が、ソラを可愛がり過ぎなのは分かってきました」  呆れたようにレジーに言われて、オレは別に何にも悪い事してないのに、何だかすごく恥ずかしい。……て、別にルカも悪い事してるわけじゃないんだけど。  じっと、ルカを見上げると、ん?と、楽しそうに笑ってくるし。

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