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「嫌いって」

「そうなんだよなー、ほんと、可愛がり過ぎなんだよ」  ゴウが大きく頷きながら、レジーにそんなことを言う。 「そうなのよ、だってあたしがちょっとソラに触ると、文句言うしねー」 「そうそう。オレもこないだものすごい強いお酒飲んで、ソラに倒れたら、それはそれはルカが怒って、ソラを連れ帰ったらしいし」  リアとキースも、絶対完全に面白がってるし。 「まあ。なんとなく、分かりました。分かりやすくて、安心するんでしょうね、王子」 「……安心?」  レジーに言われた言葉をつぶやきながら、ルカがオレを見下ろす。 「まあ……確かに、するけど、安心」  見つめ合ってると、クスクス笑われる。 「まあ別に安心するから、可愛いわけじゃねえけど」  頬をすり、と撫でられる。 「っ可愛くないし。オレ、年上だかんね! ルカ!」 「――――……あ」 「……何、あって」 「――――……忘れてた」 「……っっっ!」 「そういやそうなんだよな。その話、何回しても、忘れる」 「……く……」  なんてムカつくんだろう。  レジーまで、「え、年上なんですか?」と驚いてるし、それを聞いて、皆は笑うし。 「まあいいじゃんか。可愛いってことだ」  ルカにめちゃくちゃヨシヨシと撫でられる。 「オレ、ルカ、嫌い……」  ぷい、と顔を背けた瞬間。  ひょい、と抱き上げられて。 「うわ」  ルカを下に見て、驚いて固まってると。 「――――……取り消せ」 「え?」  取り消す? 何を? 「あ。 ……嫌いって?」 「――――……」  返事もしないで、む、とオレを見上げてくる。  嫌いって言葉。ほんと敏感。――――……何で?  そんな嫌われた事、無いだろうに。 「次は言うなって、言ったろ」  ――――……あ。言われた。  次言ったら覚悟しろって。  ……温泉で喧嘩した時だ。 「う……取り、消す……」  オレがそう言うと、ルカは、オレに一度キスして。  それから、とん、とオレを降ろした。  ――――……日本でこんなこと急にしたら、完全に変な人ですけど。  なんでだか、ここでルカがしても、誰も変にはしないし。  ――――……なんかオレも、まあいっかと……。  ほんと。変なの。   「嫌い、言うなって言ったろ」 「……ん、ごめん。――――……でも、ルカが悪いんじゃん」 「何でオレが悪いんだよ」 「オレの年……」 「だってお前、年上になんか見えねーんだもん。仕方ないじゃんか」 「……っっっそれがムカつくから言ったんじゃん!」 「ムカついたならそういえばいいだけだろ。嫌いなのかよ」 「……っっっ嫌いって言いたくなるじゃん」 「何、そんなんで嫌いなの?」 「……っじゃないけど!」 「嫌いじゃないなら、嫌いとか言うなっつってんだよ」 「――――……っ」  言いたいことは、分かるけど。  もとはといえば、ルカが……っっ。 「っ――――……嫌いは、言わなきゃいいんだよね」 「おう」  ふ、と笑うルカ。 「……じゃあ、年下のくせに、えらそーで、すっごいやだ」  そう言ったら。 「――――……ふーん」  ニヤとルカは笑って。 「じゃあソラは、年上のくせに、なんか幼くて、危なっかしくて、いっつも捕まったり、いっつもアホで、ぎゃあぎゃあ喚いてうるさくて――――……」 「……っっっ」  超ムカつく!と睨んでるオレの頬を、ぶに、と摘まんで。 「……まあ、だけど」 「――――……っっ」 「なんか、すげー可愛いから、許すけど」 「…………………っ」  この一連の会話、全く意味が分からない。 「あほらし。ただ、イチャイチャしてるだけだな。先行ってるぞー」  ゴウが言って、皆がやれやれといった雰囲気で、歩き出す。 「やだ、オレも行く!」  ルカから離れて、皆に駆け寄る。 「あ。逃げンな、ソラ」 「もーやだ、全然意味わかんないし」 「なんかオレ変なこと言ったか?」 「――――……変なことしか言ってないし」  飛んでたミウが腕の中に戻ってくるので、それをモフモフして、心を落ち着かせていると。  呼んでないのに隣にきたルカに、ヨシヨシされる。

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