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「理由」

 この世界の人達は、宴というのが好きだ。  と、すごーく、思う。  どー見ても、皆が大好きみたいだ。  どの町の人も、だもんね。  そもそも未成年とか、概念はなさそうだなぁ。  すごい若そうな子も、お酒みたいなの飲んでるし。  ……実は若くないのかもしれないし、飲んでるのもお酒じゃないかもしれないけど。まあ、別にどっちでもいいから確かめないけど。  だって、緩いんだもん、ここ。  何かっていえば、「宴」。  でもって、なんか、色んな人が入り乱れて、めちゃくちゃ大騒ぎ。  今日は外だし、更にやまもり人が居る。今日のは子供もいっぱい来てて、広場で遊びながら、わいわい大騒ぎ。  魔王とか、魔物とかいる世界なのに、なんでこんなに明るいんだろう。  不思議。  今日もルカは、たくさんの人に囲まれてる。  ていうか、今日こそ、特に、て感じかな。  皆がルカルカ、王子王子言ってて。  大人気なのが、このしばらくの間で、良ーくわかった。  入れ代わり立ち代わり、女の子達がルカに寄ってく。  もうこれも見慣れてるので、あれにはいちいち反応する気もないけれど。  楽しそう。ルカ。  そんな風に思って、なんとなく、顔が綻んでしまう位に。  ここはルカにとって、本拠地、だもんね。  嬉しいよね。  ルカも、周りの人達も。  オレは、ミウをテーブルに座らせて、色々ご飯食べさせてあげながら、話しかけてくれる明るい人達と、適当に話す。  今日はリアたち皆も、久しぶりの友達たちと、楽しそうだし。  今日はオレは、ミウと楽しく過ごしてよーなんて、思っていたら。 「ソラ」  後ろから呼ばれて、キースが隣に座った。 「あれ、キース、お友達は?」 「ん。話してきたよ。また後で行くけど。少しソラと、話そうかなと思って」 「うん? 何を?」  キースは、お酒のグラスをテーブルに置いて、オレをじっと見た。 「さっきのルカの、嫌いってやつなんだけどさ」 「――――……うん……?」 「そう。温泉行った時も、嫌いにすごく反応してたでしょ」 「うん。してた」 「あれ、理由があってさ」  理由?   キースのキレイなサラサラの金髪を何となく見つめながら。  首を傾げると。 「5.6年前とか。ルカがもう少し子供だった頃さ」 「うん」 「傭兵って分かる?」 「うん」 「戦う技に長けてて、それを職業にしてる人達ね」 「うん」 「頼りにしてる人が居たんだよ。アキって名前なんだけど。……ルカを結構可愛がってて、仕事としてもだけど、兄さん的な立場の人。でも、結構ルカの事、からかって遊ぶ人でさ」 「……うん」  ――――……なんか。ちょっと。嫌な予感。 「アキがさ。いつもみたいにルカをからかって。ルカは、アキなんて嫌いって言ったんだって。で、そのまま。撤回しないまま、アキが旅立って……」 「――――……ん……」 「……まあ。早い話。もう会えなくなっちゃったんだよね」  うぅ……。  そんな気が、途中からしてました。  そうだよね。この世界。  ――――……そういう世界なんだよね。  ルカ達がやってる事だって、普通に考えたら、かなり危険で。  ――――……今度海に出るってことだってさ。荒れてる海なんか余計、危険だし。  そういう危険と背中合わせの世界、な訳で。 「だからね、嫌いとかそういうの言ったまま、離れたくないんだと思うよ。まあさ、別れはかなり経験してるから、それがよほど傷になってるとかそんな訳ではないとは思うけどね。たださ、言った本人が一番悲しいのを知ってるんだよ」 「――――……」 「ソラがさ、ルカに嫌いって言ったまま、ルカともし会えなくなったらさ、ソラ、どう?」 「――――……無理」 「うん。無理だよね。……ルカは、ソラの為に、取り消させてる気がする」 「……うん。分かる」  特にオレ。  オレって。戦いとかじゃなくて。いつ、ここから居なくなるかも分からないし。  ……むしろ、ルカ達が居なくなるより、オレが、の可能性のが高いかもしれないんだし。 「ありがと。キース」  そう言うと。キースは、じっとオレを見て。それから、微笑む。 「ソラの「嫌い」に深い意味がないなんて皆、分かってるよ。ルカだって分かってる」 「うん」 「ただ、最後に嫌いって言ったって話は前にルカが言ってたからさ。そういう事なんだろうなと思って。 多分ソラは、意味が分からないだろうなってさ」 「うん。……ルカって嫌われたりしなそうだし、なんでそんなに、嫌いに敏感なんだろうって、思ってた」  はは、とキースは笑ってから。 「まあ、そりゃそうだよね。――――……ま、そう言う事だからさ。なるべく言わないであげて? それでなくても、ソラのことが大好きすぎるから、言われたくないんだろうし」 「――――……大好きすぎるって……」  キースはオレを見て、クスクス笑う。 「大好きすぎるでしょ、ルカはソラのこと」  否定するほどじゃないけど、うんうんと頷くのもどうかと思うし。  答えに困ってると。「ソラ」と、後ろから腕が回ってきて、ぎゅ、と、抱き締められた。    

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