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「ルカって変」

   服屋を出た後、ルカと一緒にジェイの店まで歩き始めた。 「……ルカってさー」 「ん?」 「変だよね……」 「……お前本当に失礼だな、ソラ」  そう言うけど、怒ってはいなくて、苦笑いを浮かべてる感じ。 「だってさ。オレのズボンが短くて気にする人、居ないって。皆、興味ないよ」 「……」 「あとさー、これから戦いに行くのに、そんなこと、気にする?」  ほんと、変。  むー、としかめっ面になってしまう。 「戦いが始まるまでは、普通にしてるだけだろ。で、興味あるなしじゃなくて、オレが嫌なだけ」 「――――……だからさ。興味ない人に、見られたって、嫌だなって思うとこじゃないじゃん?」 「……じゃあ、お前は、オレに興味がない女なら、誰がオレの裸見ても平気か?」 「――――…………裸の話してないじゃん!」  一瞬ものすごく考えてしまってから、何言ってんだよ、と、文句を言うと、ルカは、クックッと可笑しそうに笑う。 「ルカ、海に出たらさ、すっごく怖いのと戦うかもしれないんだよね?」 「まあ。そうだな」 「なんでそんな冗談言って楽しそうなの」 「冗談じゃねえけど」 「…………」  ん。今のは、冗談じゃないの?  じと、とルカを見上げるとまた笑い出しながら。 「戦いの方は、今までも色んなのと戦ってきたし。――――……まあ、ある程度は、慣れだな。あいつらと一緒だしな」  その言葉で、皆を信頼してるのは分かるけど。 「……でも今度、どんな相手かも全然分かんないんでしょ」 「いつもだって、なんとなくこんなのって位の情報しかない時も多々あるぞ?」 「でも海の上だしさ」 「まあ。足場は悪い気もするけど。……ソラ、やっぱり怖いか?」  オレがあれこれ言ってると、ルカが苦笑いでオレを見下ろす。 「……怖いけど。ルカが全然怖そうじゃなくて、変なこと言ってるから、なんか怖がってるのが馬鹿らしくなるって言うか」  ……あれ? オレ、何が言いたいんだか、よく分からなくなってきたぞ。 「……とにかくさ、危ないんだからさ、気合入れて」 「何、オレがふざけてると思って、心配してんの?」 「……心配はするに決まってるじゃん」 「オレが死んだら嫌?」 「……そんなの、嫌に決まってんじゃん。皆の内、誰でも、絶対やだよ」  少し眉を寄せてじっと見つめると、ルカはクスッと笑って、オレを、ひょい、と抱き上げた。ルカを見下ろす感じになる。 「ひょいひょい抱きあげるなってば……もう~……っっ」  すぐ横にミウが飛んできて、オレの顔の前でふわふわしてる。 「……」  ……可愛いなあ。もう。  オレは、ぎゅ、とミウを抱き締めて。そのまんま、ミウごとルカに抱えられて。なんか……子供か、オレ。ほんと軽々と抱かれるし。  すっげー逞しいし、強いけど……。  一応ルカだって人間だしさ。  あ。「一応」とかつけてしまった。  でもきっと、勇者だって、死なない訳じゃないし。  ここ、ゲームみたいにリセットが出来る訳じゃない気がするし。……できるのかな。どこかに神様が居て、死んだらそこに行って、お金を払ったら生き返る……。って、絶対無いと思うんだよね。  ここの世界の人は、ちゃんと、普通に生きてる……。  あー……分からない。  心の中でそんな風に、思いながら。  ルカを見つめていると、ルカは、苦笑いを浮かべた。 「まあどっちにしても行かなきゃだし。この町の奴らが、海に出られないとか、死活問題だからな」 「……」  それは、そうだけど。分かってるんだけど。 「まあソラが心配してんのは可愛いけど」 「――――……」  引き寄せられてキスされる。 「……っ」  ……ミウが、見てるー! 「……ん、んっ……」    後頭部に回ってる手のせいで、動けない。  絶対ミウが見てるってばー!  隙をついて、唇を離すと、何だよ?とルカに笑われる。 「……っミウの前で、しないでよ」  ぎゅむ、とミウを抱き締めると、更に可笑しそう。 「だから前も言ったけど、ミウのが断然長生きで、そういうのも知り尽くしてるかもしれないぞ?」  ……そうなの?   抱き締めたミウをじっと見つめる。みゅ?と、首を傾げたミウに、顔が綻ぶ。 「そんな訳ないし! こんな純真で可愛いのにっ」 「だから、見た目はずっとそのまんまなんだって……」 「汚れてるのはルカだけで十分だから」  ルカの目が一瞬で据わる。 「ふーん……まあ、またあとで一緒に汚れような?」 「……っ……やだよっ。何て言い方すんだよ~!! もー降ろせー!」  絡んでくるルカに、じたばた騒いで抵抗していると。  いつの間にやら間近に到着してたジェイの店から、ジェイが出てきて、呆れたような顔をした。 「なんか騒がしいから出てきたら…… つか、店の前でいちゃついてんなよ」 「いちゃついてないしっ」  やっと下ろしてくれたので、ミウを抱っこしたまま、ルカから離れると、ルカは苦笑いでオレを見てる。

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