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「頑張る」

「ボスと戦う時は、波の出どころに居る訳だから、多分、船は大丈夫だと思うんだけどな」 「ていうか、もう戦ってたんだね……」  知らない間に。……オレがぐっすり寝てる間に。  うう。なんかすみません。  ……まあオレ居ても、役に立たないけど。 「戦うのは、日常だからな。ソラが思う程、特別な事じゃない」  余裕そうな顔をするルカ。  ……まあ、確かに。そう、なんだろうけど。  でもやっぱり、戦いって何があるか分かんないし。  心配は心配だけど……。  そう思っていると、不意に手首を掴まれて、引かれた。 「ちょっと来な」 「うん」  船の先へと歩いて行って、寝室やキッチンにつながる階段とは別の階段を、ルカが下りていく。 「ついてこいよ」 「ん」  この階段は初めて下りるなあ……。向こうの階段より断然狭い。  何だろ、ここ。  ちょっとドキドキしながら下りていくとそこは小さな……2畳くらいの部屋になってて。ぱあっと明るい。 「わーなに、すごい……!」  びっくりしたのは、窓になっていて、外が見えること。  海の中の生き物が、見える。 「さっきアランと見てたんだけどな。波が荒れてなければ、もっと小さくて綺麗な魚も見れるらしい。今は、波に逆らえる大きさのしか見えねーけど」 「じゃあ、倒したら、帰りは綺麗なの、見えるのかな?」 「海が落ち着けば、そうかもな」 「わー、でも、おっきいのだけでも、すごい」  海は、青い。  綺麗。こんなに荒れてても、青いんだ。不思議。  すっごい綺麗。  見た事ない魚とかもたくさん見える。 「うひゃー、何あれ、でっかい! 何て魚?」 「魚の名前はよく知らねえ」  クックッと笑いながら、ルカの腕がオレを抱き寄せて、そのまま一緒に窓を覗き込む感じの体勢になる。 「ソラ、こういうの好きそうって思ったけど」 「好き好き。オレ、水族館、好き」 「すいぞくかん?」 「うん。向こうにあるんだよ、水族館って言って…… 海がないとこでも、海の生き物が見れるようにしてあるところが」 「ふーん……たまに魚飼ってる奴居るけど、そんなようなことか?」 「あー……うん、多分、それがもっと、でっかーくなったのが、水族館」  ルカを見上げて言うと、ふうん?と、面白そうにオレを見て、笑う。 「楽しそうだな、ソラ」  クシャクシャ撫でられまくる。 「いつかソラと、行けたらいいよな。すいぞくかん」 「――――……ルカと、水族館……?」  ルカが日本に来ちゃったら、結界とか、どーなるんだろ。  ……あ、そっか。倒してからって言ってたっけ。  ルカが、日本にか。  何回目だろう、また想像して。ルカがすごい目立ってるのを、思い浮かべて、笑ってしまった瞬間。 「――――……」  ぐい、とルカに引き寄せられて、キスされる。 「……ふ、っ――――……んん……?」  いつでもキスされるな、もう……。  これが当たり前になってるオレって、どうなの……。  思いながらも、自然と、キスに応えてしまう。  しばらく、キスされて、ゆっくり離された。  もうなんか、すぐ熱くなる、体というか。ぼうっとする頭というか。  どんだけなんだ、もう。 「……絶対行こうな」  ルカが、オレをまっすぐみて、なんか、ものすごーく、太々しく笑う。 「……どーやって?」 「さあ。……これから、調べる」  ぶに、と頬をつままれる。  色々言いたいことはあるのだけれど。  ……この人、ほんとにやりそう……と、ちょっと思ってしまうから不思議。  やっぱり、人って。  色々努力して、頑張って、それで自信があって、前を見据えてる人って。  きっと、すごく、強いんだろうな。 「ソラ、居るかー?」  アランの声が上から聞こえる。 「居るよー」 「あ、居た」  階段を下りてくる音がして、アランが顔を出した。 「ソラ、気分は?」 「大丈夫そう」 「今このまま、まっすぐ進んでればいいからさ、少し早いけど、夕飯の準備しようぜ」 「あ、うん、するする!」  わーい、とりあえず、オレもできること、がんばろーっと。 「じゃあねー、ルカ」  ルカの側からする、と離れると。 「もしかして、オレ、邪魔したか?」  アランがルカにそんな風に聞いてる。 「邪魔。……でも仕方ない。ソラ頑張れよ」 「頑張る」  言いながら階段を上って、甲板に出る。  あとからアランも、その後からルカも出てきた。   「いってきまーす」 「あとで覗きに行く」 「うん」  じゃーねー、と手を振ってルカと別れて、アランとキッチンの方に降りた。

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