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「結界って」

 最初はいつ、でっかい魔物に出会うんだろうとものすごく緊張してたけど、結構長い時間、何も無い。  何だか段々気が緩むと同時に、船酔いで気持ち悪くなっていったオレは、船底の部屋で、ミウを横に置いてひと眠り。  目覚めた辺りで、緊張も、酔いも、大分落ち着いた。  ミウを抱っこしながら皆の居る甲板に出ると、リアとゴウがオレを振り返った。 「おー、起きたか。気分は?」 「ソラ、大丈夫?」  ゴウとリアに言われて、頷く。 「あんまりひどかったら、薬もあるからね。いざとなったら飲んだ方が効くかもしれないし」 「う。うん。ありがと……でも、大分良くなったから」 「遠慮しなくていいからね」  ふふ、と笑まれて、一応コクコク頷きながら。 「ルカ、どこ?」 「あっち」  船の先の方を指されて、頷いて歩き出した。    んん……と。  遠慮、ではない。……多分。  心配してくれるのは嬉しいけど……。  こっち来て最初の朝に飲んだジュースの味が忘れられない。  ……苦かったもんなぁ、信じられない位。  思わず苦笑しながら、甲板を進んで、船の先の方に居るルカの元に向かう。  ミウがふわっと浮いて、空に浮かんだ。  魔法っていうものを、実際に目の当たりにすると、ゲームで見てるより、更に謎。同じ人間に見える人が、念じるだけで、色んなことをする。  特に、ルカの結界、なんて、謎すぎる。  目には見えないし。ルカはずっと唱えてる訳でもないし。  普通に普通に過ごしてるのに、結界は続いてる、らしい。  ていうか、そっか、町にも張ってるって言ってたっけ。だから、町は魔物に襲われないって。  ……原理が全然分かんないけど。  え、じゃあ、ルカがもしも、万が一、死んじゃうとかしたら、その結界が外れたら、町は魔物に襲われちゃうのかな……?  あ、そういえば、ルカが結界張れるようになってから、普通に暮らせるようになったとか、言ってたっけ……。  ふーむ。責任重大、ルカ。  この船も、アランと一緒に結界……。  結界ねぇ……。  足元を見るけど、別に普通の板だし。  何かが覆ってる訳でも無いし。  ふと、手すりに触れて、海を覗いてみる。  船の外は波が高くて、これ多分、普通だったら、波が船の中に全部入ってきて、あっという間に転覆しそうな勢いだけど。  見上げると、その波は空中ではじき返されてるみたいに見える。  うーん。言ってみれば、ビニールか何かで、船を包んで、海の上に置いたみたいな感じかな。  見えないけど、これが結界かー……。  そこで、はっと気づいて、はるか上をぷかぷかしてるミウを見上げた。  あ、良かった。大丈夫なんだ……。 「……」  ミウは、結界、通り抜けられるの?   あ、でもあれか。オレも手、船の外側に行くし……町だって、人は行き来で来てる。でもミウは、魔物の仲間なんでしょ。でも行き来できる。  どういうものなんだろう。  ……ルカっていくつ結界張ってんのかな。  よく分からないけど、なんかすごいなあ……。  少しは揺れるので、手すりに触れながら、ルカの姿が見える方に歩いてると。 「ソラ。起きたか」  言いながら、オレに気付いたルカが歩いてきた。 「顔色戻ったな」  クスクス笑いながら、ぷに、と頬をつまんでくる。 「真っ白だったもんな。少し慣れたか?」 「うん。今は平気」 「しばらくすげえ揺れてたの、気づいたか?」 「え? ……ううん。寝てた。そうなの?」 「小さい魔物は結界で弾けるんだけどな。デカいのがさっき、ぶつかってきて」 「え」 「戦う時は、オレの結界は外さないといけないから、アランの結界だけになるんだよな。それで、倒すまで、結構揺れてたけど」  ちら、と見られて、クッと笑われる。 「寝てられたなら、平気か」  クスクス笑いながら、ルカがオレの頬をすり、と撫でる。 「……あのさ、ミウって、何で、結界大丈夫なの?」  言いながら、見上げると、ルカも一緒に空を見上げて、苦笑い。 「……さあ。ミウ自体が結界張ってるって言ったろ?」 「うん」 「抜けられるんだろうな……」 「え。じゃあ、結界を抜けれる魔物も居るかもってこと?」 「……居るのかもしれねえけど、破られたことはねえな」  ルカは、ミウを見上げて、クッと笑う。 「あのフォルムで、どーやってんなことしてるのか、分かんねえな?」  可笑しそうに笑うので、オレもなんだか面白くなっちゃって。 「すごいね。可愛いのに」  クスクス笑いながら、二人で、上空で浮いてるミウを見上げる。  

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