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「出航」

 色々必要な物を船に乗せて、準備完了。  アランと一緒に整備してた人達と、ジェイが船を降りた。  ただひたすら、ドキドキしていると、海へと続くと思われる大きな扉が開いた。  看板から、見送るジェイ達を見下ろす。 「無事帰って来いよ!」  ジェイにそう言われて、皆、笑ってる。  ――――……ほんとに、本気で、そういう意味の出航なんだと思うんだけど。皆は、余裕の顔で笑うんだな、と、思わず、全員の顔を見てしまう。  船がゆっくりと動き出して、ジェイ達と離れていく。  地上から離れていくのが、ちょっと、怖いのはオレだけみたい……。  手を振って、ジェイ達が見えなくなって。  船は、海へ向かって走り出した。 「海に出たら揺れるかも。気を付けてろよ。結界無しでどんだけ揺れるかちょっと確かめるから」  ルカがそう言うと、皆が頷く。  造船所から海に続く道が終わって、海に出た瞬間。  相当波が強いからか、がくん、と揺れた。  一応気を付けてたのにオレは、強い揺れにがくんと、倒れ……かけたところで、ルカがオレをすぐに支えてくれた。皆を確認すると、それぞれ船に捕まってる。 「……やっぱこれ、普通には絶対ぇ無理だな」 「だな」  ルカとアランが、苦笑いで言い合う。  それから、アランもルカも、何かを、唱えた。  すぐに、揺れている船が、すうっと、落ち着いて。  ルカの腕の中に納まったまま、船が普通に走り出すのを確かめてから、そっと離れてみた。  もう、大丈夫かな……?  おそるおそる周りを見渡していると。 「もう大丈夫だぞ」  クスクス笑いながら、それでもなんとなく腕を掴んでくれてるルカ。 「大丈夫なら離していいよ?」 「……普通大丈夫なんだけど、お前なんか転がりそうで」  そんな風に笑うルカに、もうどこにも捕まってない皆が、クスクス笑う。 「転がらないし」  ルカの手を離して、船の端に向かって歩き出した瞬間。  急に少し揺れて、おっとっとと、つんのめったところを、ルカに抱き止められた。 「えっと……」  気まずい感じで、ルカを見上げると。 「……予想通りにも、程がねえ?」  クックッと笑いながら、ルカがオレを見下ろす。 「……揺れないんじゃないの?」  あまりにルカの言うとおりに転がりそうになって、ちょっと恥ずかしいので、むー、と聞いてみると。 「高い波を避けるように、結界張ったんだよ。別に船を浮かばせて運んでる訳じゃねえから、普通の船の揺れはあるから、気をつけろよ」 「……はーい」 「船浮かせればいいのにとか思ってる?」 「いや……多分魔力使っちゃうんでしょ?」 「お、そういうのは分かんの?」  ……絶対馬鹿にしてる。  ていうかねー、船に結界なんて張ったりはしてなかったと思うけど、ゲームで散々魔法使ってたからね。知ってるんだよ、オレ。  ……とは言わないけど。  …………そういえば、魔力を回復させる草とか……無いのかな。  ――――……ないんだろうなぁ、きっと。そういうのは。  なんか、ここの世界は、ロールプレイングゲームの世界ではある気がするんだけど、もっと、現実っぽく……日本に居た時みたいに、皆がちゃんと生きてる感じがする。  セーブポイントとかは無さそうだし。  魔法はあるけど、魔力回復する液体とか、そういう変なアイテムとかは、無さそうだし……。  ――――……しいて言うなら、ゲームの世界観で、普通に人として生きてる世界……って感じかなあ……全然よく分かんないけど。 「ミウー」  ふわふわ浮いていたミウを抱き締めて、今度こそ、まっすぐ立った。  船がスビードをあげて、沖へと走り続けている。 「すっご……」  波は高くて、白い水しぶきがあがっているけれど、広がる海は真っ青。  後ろを振り向くと、今、後にした町が、遠くに少しだけ見える。 「ルカ、とりあえず、まっすぐ沖へ進めばいいよな?」 「ああ。この高い波がどこから発生してるかだよな。暴れてる奴がいるんだろ?」 「多分。たまに海を見てたけど……波が止む時があるんだよ。そんなに長くはないんだけど」 「ああ。そうか」  アランとルカはもう分かってるみたいで、うんうん頷きながら話してる。 「……波が止む時があるってどういうこと??」  そう言うと、ルカが、オレを見て、ふ、と笑った。 「その元凶が、寝てるか休んでるかってことだろ。何かしらの生き物か、魔物かってことだよな」  ……なるほどー。   ――――……ていうか。こんな広い海で。ちょっと暴れたからって、そんな波を起こす、生き物とか。  わーん、怖い。  はー。  できたら……会いたくないんですけど。  来た意味が全然ないけど。  ついつい思ってしまう、オレ。

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