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「緊迫感?」
昼食を終えて、ジェイの詰めてた食料も皆で台車で運びながら、アランの船にたどり着いた。
「アラン」
ジェイが呼ぶと、アランと、アランと一緒に整備していた皆も出てきた。
「終わったか?」
「ああ。終わった。もう出れるよ」
アランが船の上から、満足そうに言う。皆も、ふわ、と笑顔。
「乗って来いよ」
アランに言われて、皆で荷物と共に、船に乗り込む。船を見回して、一番に思ったのは。
「中もすっごい綺麗になったー」
そう言うと、アランが笑いながらオレを見た。
「そりゃそうだ、整備と掃除、終えた所だしな。下の部屋もだいぶ綺麗にしたぞ」
「そうなんだ」
クッキー食べたところがキッチンぽかったような。
何部屋かドアもあったっけ。ちょっとワクワクするけど。
……旅行じゃないんだよね。うう。残念……。
「波が高いけど、ある程度は結界で押さえられる……とは思う」
アランが最後のセリフを付けて笑うと、ルカが、「押さえるって言えよ」と笑う。
「結構な波だからな。無事進みたかったら、ルカが手伝えよ」
「んーまあ……アランの結界の上に重ねてみるけど。やったことねえから、どーなるか」
「結界なんて重ねられるんだ……すごいね」
「すごいだろ」
ニヤッと笑みを浮かべて、ルカがオレを見て、ちょっと得意げ。
「うん、すごい」
まあ正直よく分かんないけど。……目には、見えないし。
思いながらも、ウンウン頷いていると、ルカがクスクス笑う。
皆が船をあちこち見ながら色んなことを話してる時、ジェイが、オレを見ながらアランに話しかけた。
「アラン、ソラにはある程度料理の仕方教えたけど、まあ……実地で教えてやって」
「ああ。分かった。最初はオレの助手からでいーよ。ソラ」
そう言われて、うん、と頷く。
「手取り足取り教えてやるからなー?」
肩を組まれたけど、まあべつにこれ位は慣れてきてて、うん、と頷いた所で。
「触んな」
ルカが、ぐい、とアランの頭を押しのけて、オレを自分の方に引いた。
……なんか、この流れも慣れてきたよ、オレ。
「何だよ、オレは、料理を手取り足取り教えるだけだっつの」
「教えるのは良いが触んな」
「つーか、あんなに色んな女相手にしてたくせに、今更そんなソラにこだわんなくてもいーだろ」
「お前には関係ないだろ、ソラはオレのだ」
「ていうかソラはものじゃ――――……」
オレは、そーーーっとそこを離れて、呆れた顔してるジェイを手招きして、運んできた食材の箱を開いた。
「すごいたくさんだね」
「まあ、魚釣って食えたらいいんだけどな? でも、波が荒れてるから、釣れるか分かんねえから」
「そっか。……うーん、何日位かかるんだろ??」
全然見当も付かなくて、うーん、と考える。
そもそも丸一日船に乗った事なんか無い。
短いと三十分の遊覧船。長くても、なんか昔家族旅行で島に行った時、一時間くらい、乗ったかなあ。
そういえばあん時、車で船に乗り込んで、船底に駐車場があったんだっけなあ。今思うと、すごいでっかい船だったんだろうなあ……。
それに比べると、この船は、そこまでは大きくないかも。
「んー、どうだろうな? すぐ見つかって倒せたら、明日帰って来るかもな? そしたらこの食材もほぼ持ち帰りだけどな」
「そっか、そういうこともあるかもしれないんだ。すぐ帰ってこれたらいいなあ……」
「まあそうだな。早く帰ってるように祈ってやるよ」
「うん」
ふふ、とジェイと頷きあっていると。
「お前のことで話してんのに、なんでそこでジェイと仲良くやってんだ」
今までアランとなんだかんだ言いあってたルカが、不意にオレにそう言った。
「だって……ルカとアランは、オレのことって言いながら、仲良く遊んでるだけけだし……」
「「はー??」」
アランとルカが、同じタイミングで言って、オレを険しい顔で見つめる。
「仲良しじゃん……」
はーとため息を付くと、確かにな、とジェイが笑い出した。
……ほんと。緊迫感、ないなー。
皆は怖くないのかな。
戦う皆より、戦えないオレが一番、ドキドキしてる。絶対。
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