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「ほぼ守るって」

 皆で食事中。  ルカがリアの方を見た。 「リア、船に酔った時の薬とか、あるか? ソラ、船に慣れていなそうだから」 「えーあるけど……」  ちらっと、リアに視線を向けられる。 「あるけど、何?」  そう聞くと、リアがめちゃくちゃ苦笑いを浮かべた。 「すっごくマズイから、ソラが飲んだら、それで吐くかも」 「え……」  皆が笑うけど、笑い事じゃない。 「オレ気合で何とかするから。薬には頼らないから」  そう言うと皆がますます笑う。  ルカも、どっち取るかって感じだな、とか言って笑ってるし。  いやいや、船酔いプラスまずいので吐くなら、船酔いだけで吐く方がいいじゃん!! どっちも何もないっつーの!!  マジで最悪。  ……むむ。すぐ船乗るなら、あんまり食べないで置いた方がいいかなあ。  と、少し食べるのをやめて、ミウにだけ食べさせていると、ルカがすぐ気づく。 「お前食ってないだろ。腹減ってると、よけい気持ち悪くなるかもしんねーぞ。適度にくっとけ」 「……でも全部出すかも」 「まあそれはそれ。食っとけ。ほら」  あーん、と口にまた食べさせられる。  ここに来て何日? 男に食べさせられるとか、ほんとに、慣れてきてて、自分の順応性にちょっと呆れる。  そういえばオレって。  あんまり今まで考えた事なかったけど。  順応力、結構あったんだな。  流されて、ふわふわ生きる、みたいな。  じゃなきゃここの生活とか、色々ありえないことが、多すぎる。  良かった、意外と、そういうとこあって。 「ほら」  ちょうど食べ終わった所に、またルカが食べさせようとしてくる。 「ん」  ぱく、と食べながら、オレはオレで、ミウに食べ物与えていると。  それを見てた皆が、クスクス笑う。 「餌付け、しあってる……」  クスクス笑うリア。 「ほんと可愛い……」 「リア、あのさ、オレ、可愛いとか向こうでは言われてないから……可愛いとか言われると、何て返そうか、ほんとにこまるんだけど……」 「えーそうなの? こんなに可愛いのにねー?」  言ってから、リアは、ああ、と何かに気付いた顔をした。 「なに?」 「ソラは、ルカの前に居ると可愛いんじゃないの? あと、こっちで、すごくワクワクした顔してる時とか、あと、ミウと居る時も、ほんと可愛いから」  クスクス笑われて、更にそんな風に言われる。  ……今リアが言ったのは、確かに、こっちの世界にしかないものだな。    オレが可愛いって言われるのは、それらのせいなのかな。  むーん。……でも、よく分からないや。  ちょっと考えながら、食事を仕方なく食べていると。  ルカがふ、とゴウを見やる。 「ゴウ、頼んだものは有ったか?」 「ああ。とりあえず……これで良いか?」  ルカの言葉にゴウが、自分の荷物から取り出したのは、短剣だった。  受け取って、ルカがその鞘から刀身を出す。  日本だったら、捕まりそう……。  そんな風に思っていたら、よく斬れそうだな、とルカが笑う。 「ソラ」 「?」 「これ、持ってろ」 「――――……」  刀身を鞘に戻した短剣を、オレに渡してくる。 「えっ?? オレが、持つの?」 「何かの時の為に。――――……一応持っておけよ」 「……オレ、使えるかな」  これ持ってても、何かを斬ったり、できない気がするけど。 「オレが守るから、要らないようにするけど――――……こないだみたいに、花の中に取り込まれたりして、オレが一瞬見失ったり……しねえようにはするけど。とにかく持ってて損はないから持っとけ」 「――――……うん」  ……これを持ってて、怖いなーと思うのが、損。  そんな気もしたけど。  確かに、あの時、中から花を刺せたら。出られたかも。  そんな風に考えていたら、ルカが、オレをじっと見つめながら。 「……ああでも、へたに刺したら、吹き飛ばされてケガするとかもあるし、まあ基本、早々には使うなよ」  ルカに、そう言われて。今考えていたことを否定された感じで、がっくりしてしまう。 「もう、使うか使わないか、どっちなんだよー」  そう言うと、皆が、確かに、と笑ってる。  ルカは、オレの頭に手を置いて、くしゃくしゃ撫でながら。 「いざどうしてもって時のために、持ってろってこと。それ以外には、お前には使わせないようにするから」 「――――……」 「基本、ほぼ守るから」 「ほぼって……」 「あほみたいに、脇から連れていかれるなよ?」 「……はー。頑張ります」  頷くと、また皆が笑った。  

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