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「こんな時なのに」
リアの炎をのせた、ルカの剣。
魔物の体に当たった時、少し離れても伝わってくるすごい衝撃と煙で、一瞬見えなくなった。
効いた……?
ミウを抱きしめたまま、目を凝らして見ていると。
相手が真っ二つ、とかにはなっていなくて。
……というか、あまり効いてないみたいに見える。
攻撃を終えたルカが飛んで戻ってきて、甲板に降り立つ。
「火じゃ効かねえな。かき消される」
ルカの声がして、皆の顔が、より引き締まる。
ルカが、パッと振り返って、オレを見た。
「――――……」
目が合うと、ルカは、こんな時なのに、オレを見て、ふ、と笑った。
ちゃんとオレがそこに居るのを、安心したみたいなそんな感じ。
――――……こんな、時なのに。
ぎゅ、とミウを抱き締める。
「あとは、オレの全力注ぎ込んで攻撃するから――――……これで効かなかったら……リア。ソラの側で、だからな」
「分かってる!」
全力注ぎ込んでって。
――――……この魔物、魔王より厄介なんじゃ。
魔王はそこそこ魔法も攻撃も効いたもんな。
こいつは、攻撃には特化してないけど、色んな攻撃に耐性がありすぎて。
――――……倒すことが、出来ない設定の奴なんじゃ……。
でも、アランの船を捨てたくはないだろうし。
……戻っちゃったら、漁もできないわけだし。
ここまで来て、ルカ達、悔しいだろうし。
でも、全力使い果たしたルカなんて、見たこと無いし――――……見てきた限りずっと、軽く倒してきてたのに。
「ミウって、結解とか外せない?」
そう聞くけど、ミウはオレをただ見つめてるだけ。
……ミウ自身が自然と結解を張ってるのと、別の奴が張ってるのを外すのとは……きっと違うんだろうな。
なんとか、あの結解を外せたらいいのに。
あの硬いの、どうにか出来たら、いいのに。
色んなゲームやってきたけど――――……物理攻撃が効かない奴は、魔法が効いた気がするし。魔法も、火は効かない奴には雷が効くとか。属性によって、色々あったような気がするけど。あいつ、火は効かないけど、雷の魔法使うから、そっちも効かなそうだし、海に居るから、水も……あとは魔法……魔法は効かないのか。だとしたら、やっぱり、結界無くして、物理攻撃……今のまま、ルカが最大限でやって……ルカの力と、あいつの結界がどっちが強いかっていう、力勝負みたいな……。それでいいのかな。
……ていうか。
ここがゲームの世界なら、の話で――――……違うのかもしれないし、そうかもしれないし、どうしたらいいんだろ。
ミウを見ながら瞬間的に、頭の中に色々な考えが、浮かんでは消えていく。
ていうか、あの魔物って、攻撃はあんまりしてこないけど、戦う時はどうしてるんだろう……あの触手みたいな足みたいなのって、今のところ、何をしてくることもないけど――――……とどめがさせないって、延々と戦うのかな? それとも、何か――――……。
思った瞬間、だった。
不意に近くに現れた、小さいの。いや小さくないけど!
そいつが、本当にオレのすぐそばに居て。
オレに覆いかぶさろうとしてきて。びっくりして声も出せず目をつむった、その時。
予想したどんな痛みも、全く無くて。ふわ、と、抱き上げられる感覚に恐る恐る、目を開けると。
ルカがオレを抱いて浮かんでて。
デカいけど小さめなそいつは、吹き飛んで行ってた。
カラン、と音がして。ルカの剣が、甲板に落ちたのが見えた。
オレを抱きながら跳ね返したせいで、手から滑ったのか。早く拾った方が。と思った時。
「……っぶねえな。もう、お前は、何でいっつも……」
苦笑いで、オレを見下ろすルカが、オレが腕の中にちゃんと居ることに安心したみたいに、ぎゅ、と手に力をこめて、抱き寄せてくれて。
こんな時なのに、すごく、安心する。
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