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「保留…」

 オレの頭をよしよし撫でながら、ルカがオレを見下ろす。 「そろそろ行くか、下」 「……うん」 「料理、したいだろ?」 「うん」  ルカ、絶対疲れたろうし。  ――――……ごはん、食べさせてあげたいし。  だから、キスはしないし、続きも、またあとでだけど。  頷いてから、ルカを見上げる。 「――――……」  首に腕を回して、引き寄せて。  その頬にキス、した。 「食べて……片づけたら――――……」 「――――……」  驚いた顔をしてるルカに、ものすごく、恥ずかしくなりながら。 「……ルカが元気だったら……しよ?」  いつもは誘わないけど。なんか、ルカの生きてるっていうのを感じたくて。したいなって思ってるから。  オレ的には、すごくすごく勇気を出して誘ってみたのだけれど。  ルカは、なんだかすごく嫌そうに眉を顰めて、オレを見下ろした。  え゛。  そんな嫌そうな顔しなくても……。  そう思ったら、両頬をぶに、とつままれた。  そして、ルカってば。大きく大きく、はぁぁぁとため息をついてるし。 「……お前、今オレがすげー我慢してるって、分かってないの?」 「んー……分かってる……かな?」 「嫌がらせか?」 「…………そんなつもりはないんだけど……」  困ってると、ルカが、最後にちゅ、と頬に口づけた。 「…………覚えてろよ」  そのまま、くしゃくしゃ頭、撫でられる。  ――――……ほんとに、口にはキス、しないんだ。  キスしたら、ルカ、我慢するのがそんなに無理なのかな? と思うとなんだか少しおかしい。  こんなカッコイイ王子で、すっごくオレ様って感じだし。そういうことにもめちゃくちゃ慣れてて、今までいろんな人とシてきてて、いっつも余裕っぽいのに。キスしたら、我慢できなくなっちゃうとか。  変なの、ルカ。 「……もう離してもいいか?」 「……?」 「落ち着いたか?」 「あ……うん」  安心した。ルカが、ちゃんとここに居るって。しばらく、心臓の音聞いて、やっとちゃんと、思えた。 「じゃあアラン、手伝いに行く。ルカも、皆のとこ行く?」 「ああ。オレも行く」  二人でキッチンへと降りていくと、皆がオレ達を見て、笑った。 「なかなか来ないから、上で始まったのかと思った」  ゴウの、いつも通り、デリカシーのかけらもないセリフ。  でも皆も笑ってて何も言わないところを見ると、皆もそう思ってたのかと思うと、かなり恥ずかしいけど……でもこんなこと思われるのは、ルカの日ごろの行いが悪いだけだから、オレのせいじゃないに違いない。  スルーを決め込む。 「アラン、ごめんね、手伝う」 「ん」 「何すればいい?」 「じゃあサラダ作って」 「分かった」  エプロンをつけて、アランの隣に並ぶ。 「何してたの、上で。再会の感動に浸ってたのか?」  テーブルに居るゴウの隣にルカが腰かけると、ゴウがまた、そんな話をルカに振ってる。 「何してたってほどのことはねぇけど……キスもしてないしな」  ルカが普通な感じでそう答えていて、周りに座ってる皆も、珍しい、とか言って笑ってる。 「ああそうだ。――――……ちゃんと、ソラにプロポーズしてた」  ……!  オレがルカを振り返ると、皆が一斉にオレを見た。 「……って言っても、こないだもしてたよね?」  リアが笑いながら言うと、アラン以外の皆は、確かに、と笑う。 「なに、結婚申し込まれてんの? ソラ」 「……そうみたい」  アランの質問にそう答えたら、アランは可笑しそうに笑った。 「その様子だと保留中?」 「考えるって、答えたの」 「なるほど」  ますます面白そうに笑うアランに、苦笑い。  

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