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「ずるいと思う」

 あの後、シャワーで綺麗に流してから、タオルでざっと拭かれて、抱き上げられた。 「ソラ」  散々感じさせられた体は、もう全部、ぽわぽわ上気してるみたいな感覚で。  頭はふわふわ浮いてるみたいな。 「ん……?」  ぼんやりと、オレを呼んだルカを見つめると。  一本立てた指をくるんと動かしながら、ルカが何か唱えた。……と思ったら。ふわりと吹いた温かい風が髪を包んで。風が通りすぎた時には、もうオレの髪の毛は乾いていた。 「……うわ。ほんとすごい……」  楽しすぎる。 「……オレ、その魔法使いたいなあ……」 「風と火の魔法どっちも使って、しかも燃やさないように加減して、だからなあ。相当難しいぞ?」  クスクス笑いながらルカが言う。 「そうなんだ……加減しないと、髪の毛、燃えちゃうの?」 「火だからな」 「あはは。チリチリんなったら面白いねー」 「笑いごとか?」  ルカが可笑しそうに笑いながら、オレを見る。 「あ、オレのはやだ。やるならルカの髪で、ちりちりを再現してよう」 「……ちりちりっつうか、燃えるぞ?」 「う。……怖いね、この魔法。ルカは失敗しないの?」 「しない」  可笑しそうに笑いながら、ルカがオレを見下ろす。 「失敗するかもしれないようなもの、お前にかける訳ないだろ」  あ、また。さらっと、そういう。  オレを大事にしてそうなことを、さらさらっと言っちゃうんだ、ルカは。あんまりそういうの言ってることは、自覚してない気がするけど。  抱き上げてたオレを、ベッドの上に、そっと降ろす。  タオルを一応巻いてたけど、オレもルカも全裸なので……正気に返ってる今は、結構恥ずかしい。  しかも今、真昼間だし。なんか余計、気持ち的に、恥ずかしいような……。  ルカもベッドの上に腰かける。 「……ルカは、髪、乾かさないの?」 「別にオレは気になんねえけど」  ……濡れてるルカ、カッコいいからまあ。そのままでもいいけど。  とか、考えて、ハッと気づく。  何言ってんだ、オレってば。  相当、ルカのこと好きになってる気がしてきたような……。  うう。恥ずい。 「来いよ、ソラ」  腕を引かれて、抱き寄せられる。 「……また、するの?」 「ん……けど少し、休憩な。お前、飛びそうだから」 「飛びそう?」 「意識、飛びそう」  クスクス笑いながら、そんなことを言うルカに、ちゅ、と頬に口づけられた。後ろから腕が回されて、ルカの脚の上に座らされる。 「――――……」  密着感が、すごい。 「……なんかさ、ルカに言いたいことがあるんだけど、オレ」  そう言うと、まだ何も言ってないのに、ルカは、クッと笑い出す。 「何で笑うの」 「……また面白いこと言いそうだから」 「まだ分かんないじゃん!」 「……まあそうだな。いいぜ、言ってみな?」  言ってみな、とか言われちゃうとそんな大した話じゃないんだけど。 「なんかさぁ。シてる時さ?」 「ん」 「……オレばっかり、ぐちゃぐちゃで、なんか、すごく、嫌なんだけど」  そう言うと、ルカは、しばらく無言で。  何かを考えていたみたいなんだけど、ふ、と吹き出したみたいな笑い方をするので、キッと後ろを睨む。 「何で笑うの!」 「……だって、お前……確かにぐちゃぐちゃになってるなと思ったのと……」 「何??」  んー、とルカはまた少し考えてから。  「……ソラばっかりぐちゃぐちゃで、としたら、じゃあオレはなんだって感じな訳?」 「――――……なんか、ルカは……」 「ん、オレは?」  ……何なんだろう。ルカはね。  …………とにかくオレは、ぐちゃぐちゃにされてるのは、よく分かるんだよ。涙すごいし、汗もすごいし、ずっとイってるみたいで、あっちもヤバいし……。 「ルカは、なんか……しれっとしてて。カッコイイまんまって言うかさ……」 「――――……」 「……多分、ルカはシてる時に覗かれても、別に困らないというかさ」 「――――……」 「オレは、絶対誰にも見られたくないもん、ぐちゃぐちゃだから」 「――――……」 「……だからさあ、ずるいと思うんだけど!」  ルカの返事がなかったけど、とりあえず全部言い終えるところまで、言ってみた。  すると。腕を掴まれたと思ったら、くるん、とひっくり返された。座ってるルカに抱き寄せられる、オレはルカの上に座らされて、ルカと真正面で向かい合った。   「――――……」  裸でこれは、結構恥ずかしい……。黙ってると、ルカの右手がオレの顎を掴んで、頬まで、ぶに、とつまむ。必然的に口がとんがってる感じにさせられる。 「オレが余裕で、しれっとして見えてんの?」 「……見えてるっていうか、そうでしょ? 見た目全然変わらないしさ、ルカはいつものルカのままでさ。ちょっと息が速い位? ずるいと思うんだよね」  喋りづらいけど、何とかそう言うと。ルカは、苦笑い。 「お前、自分がいっぱいいっぱいで、オレのことなんて、見てないんだろうな?」  ルカはクスクス笑って、そんな風に言う。

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