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「何だっけ…?」

 ブンブン振っていた、自分の手首に、ふと気づく。 「……あのさあ、アラン」 「ん?」 「この飾りに、結界が張ってあるって、アラン言ったでしょ」 「ん。言った」 「どんな結界なの?」 「んー……ほら、エプロン」 「ありがと」  アランからエプロンを受け取って、身に着けていると。 「ルカもそれ、してるだろ?」 「うん」 「ルカってさ、町にも結界張ってるって言うじゃん」 「うん」 「それって、町に結界の中心となるものを置いてるんだよね。まあオレはそんなでかい結界は張れないから、良く分かんないけどさ。その中心の周りに、結界を張ってるんだと思うんだよ」 「ふうん。うん。なんとなく分かった」 「で、ルカとソラは、この飾りでつながってて……多分、ソラを隠してる」 「隠してる?」 「まあ結界ってさ、物理的に跳ね返すものもあるけど……見えないようにするって効果のものもあるから。むしろ町に張ってあんのはそっちかなって思うけど」 「隠せるの?」 「そ。凄いよな。おかげで、すぐ近くに魔物が来ても、中に入られずに済む」 「……なるほど。あれ、でもさ、オレ、良く魔物に狙われるけど」 「……それは良くわからないけど。……もしかしたら、そこらの目の前に居る魔物じゃなくて、何か魔法的な透視から見えなくしてるとか……? オレには良く分かんないな。……ルカに聞いてみな?」 「うん。後で聞いてみる」  結界か。魔法があるゲームの世界では良く見かけてたから、なんとなく、どういうものかは分かってるけど、いざ、現実のものとして考えると、不思議。  まあ、使えないし、オレに分かる訳ないか……。  しばらくアランと一緒に、軽く食べれる物、色々作ってたら、ルカが下りてきた。 「ソラ、スープ作って」 「うん」  ルカ好きだなあ、スープ。  ふふんふん、と鼻歌を歌いながら、スープの準備をしていると、「なあ、ルカ」とアランが呼びかけた。 「ソラの手首の飾りってさ、結界張ってるだろ?」 「ああ」 「何から守ってんの?」 「……さあ。良く分かんねえけど。ソラを運んだ奴が居るなら、そいつから見えないようにしようと思ったって感じ、か?……正直、効いてるのかどうかもわかんねえ」 「……そうなの?」 「……そんな奴が居るのかも分かんねえから、効いてるのかも分かんねえだろ? 何かのきっかけで、飛ばされてきただけかもしれないし。これをしてるから、ソラが今もここに居るのかどうかは、分からない」  お湯を沸かしながら、ルカがアランに話しているのを聞く。  ……そうなんだ。  ……オレを運んだ奴?? ……何のために?? 運んだって。向こうからこっちに?? そんなの、居るの?? 全然分からないけど。  ……あれ。  なんか今。ちょっと何か……思ったような。  ――――……。 「ソラ?」  ルカに呼ばれて、はっとして顔を上げた。 「どうした?」 「……ううん、なんでも……」  ……何か、変な夢見た気が……。  でもよく思い出せない。  夢だっけ。ゲームの世界? なんだっけ。……思い出せないからあとでまた考えよ……。  思いながら、スープの味見をしていると。 「ソラ、卵入れて」 「うん、いーよー」  ルカはふわふわ卵のスープが好きみたい。  オレも好き。卵デカくて割りにくいけど。  スープの中に、卵を落としながら、うーん、なんだっけ、と延々考える。 「ねー、ルカ」 「ん?」  隣に来て、スープを覗き込んでるルカを見上げる。 「魔王ってさ」 「ん」 「……昔は居なかったの?」 「さあ……現れたって話だから、居なかったんじゃねえの?」 「…………オレと、同じように、向こうから来た人かも、なんだよね?」 「確証は何もないだろ……光が似てたっていう話で、そうかもしれないし、違うかもしれない」 「…………でもさ、もし、同じだったらさ、オレも魔法使えるかもってことかな??」 「だからわかんねえって……」  答えながら、ルカはクスクス笑った。 「魔法、そんなに使いてえの?」 「うん。何か、使ってみたい。せっかくここにいるんだし」 「ったって、ここに居る誰もが魔法を使える訳じゃないけどな」  可笑しそうに笑って、ルカはオレの頭を撫でてくる。 「まあ……頑張れ」  クスクス笑いながら言うので、うんうん、と頷いて、オレは火を止めた。

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