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「夢じゃないはず」

「あ、別に、悩んでる訳じゃ……あ、そうだ、ルカはさ、結界っていつから張れたの?」 「いつからって……結界張りたいのか?」  ルカがオレの言葉を繰り返してから、クスクス笑いながらオレを見下ろした。   「オレは気づいたらって感じだな。結界は練習はしてない。成長して集中が増してから、広範囲にいくつも張れるようになったってだけ」 「ちなみにオレが船に張る結界は、じーちゃんとか父さんと結構練習したぞ? 練習しないで、町のあちこちで張るとか、やっぱすごいよな?」  アランが苦笑いしつつ、ルカにそう言う。 「集中して、力を向けるやり方さえできれば、ある程度はいけるんじゃねえか?」 「目の前の船だけで精一杯だっつの」  アランが笑いながらルカに言ってるのを聞きながら、ふと、思いついたことを聞いてみる。 「あのさ……もしも、ルカが死んじゃったら、結界って解けるの?」 「さあ。どうだろうな? 死んだことねえから分かんねえけど」  なんて言って笑いながら。 「多分、結界の中心として置いてあるものが壊れない限りしばらくは保たれる。と思ってるけどな」 「こういうの?」  オレが手首の飾りを触りながら言うと、ルカは頷く。 「これは切れたら多分解ける」 「……そうなんだ」 「何も使わず張ってるものは、オレが死んだら外れる」 「うん……って……ごめん、死んだらとか。変なこと聞いて」  ……縁起でもなかった。  やだし。ルカ死んじゃったら。 「ちょっと聞きたかっただけ。ごめんね」  そう言うと、ルカはなんだか不思議そうな顔をして、オレを見下ろす。 「別にそんなのたとえの話だし。謝んなくていいけど」 「……けど??」 「ソラが素直にそんなの謝ると気になる」 「なにそれ。……オレはいつも素直だけど?」 「そうか?」  面白そうに笑いながら、どうだっけな、とか言って、ルカは、オレの頬をぶにぶに触ってくる。 「まあ、そんな簡単に死なねーし」 「……うん」  ああ、なんかこの変に気になる、嫌な感じはあれだ、今日、ルカが死んじゃうかもとか、よぎったからだ。飲み込まれて見えなくなって、どうなってるか分からなかった時の気持ちが、よみがえってるからだな。と、自己分析。  実際には、あんなのの中でも、ぴんぴんしてたし、オレが行かなくてもきっと、魔法か何かで、自力で出てきたのかも、しれないけど。  ルカが死んじゃったらとか、言うだけでも嫌な気分になってる。  やっぱり少し身近に感じちゃったからか、もう、ほんと、怖い。 「……うわ」  脇に手が置かれたと思ったら、ぐい、と引かれて、ルカに思い切り後ろから抱き締められた。 「簡単に死なねえから、心配すんな」  クスクス笑いながら、ルカはそう言う。 「……うん」  勇者だもんね。死なないよね。……うん。  ……そうは思うのだけど。勇者って言っても、こうして触ってると、あったかい、ごくごく普通の生身の人間だし。と、やっぱり、心配だったりするのだけれど……。  それから、ルカはまた、オレにあれやこれや食べさせてくるし。それを皆が面白そうに見ているし、本当に、いつも通りの宴会って感じ。  星空はものすごく綺麗で、波も、昨日までが嘘みたいに穏やか。  まあるい月が、穏やかな海に映って、光ってる。  この世界は確かにここにあって、ルカも皆もミウも、確かに存在して、オレの側に居る。しゃべって笑って、食べて飲んで、ちゃんと生きてる。    ルカも言ってたけど、やっぱりこれは、夢なんかじゃない気がする。  と、思うんだけどなあ……? じゃあ何だろって話だよ。  でもって。  ……何か引っかかってる、なんかの記憶。        

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