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「またびっくり」
「ねぇ、ソラって、どんなとこで生きてたの?」
リアがいつもよりちょっと高い声でそう聞いてきた。
ちょっと酔ってて、可愛い感じになってるなあと思いながら、んー、と考える。
「ルカにも聞かれたんだけど……色々違いすぎて、どこから話せばいいか良く分かんないんだけど……んー。魔法は、無いよ。でも、魔法っていうものがどういうものかは知ってる。本とか色々で、見れるから」
「ふうん……じゃあ、知ってるのに、使えないんだね。逆に何で使えないのに知ってるの?」
「……うー……?」
そう聞かれると…… はて、何でだ。
使えた人が居たのかな、ずっと前は。概念だけ残って引き継がれて……? 魔女だとか、吸血鬼だとか……うーん。
魔法にしか見えない手品とかする人もいたけど、実はほんとに魔法だったとか? ううううーーーん……???
「ごめん、分かんないー」
「そっかー」
リアはクスクス笑ってる。聞いてた皆もなんか穏やかに笑ってて、それ以上は聞かれない。
……魔法っていうのが空想の物だとして……それが使える設定のゲームの世界が、ここ、だとして。その世界観のまま本当に魔法が使えて。……でも、全部一緒じゃない。今日倒した魔物なんか居なかったし、海が荒れて、船で出るなんてエピソードは無かったし。
……全部は一緒じゃない。
でも、人は、名前も性格とか見た目とかも、そのままで。でもセーブポイントとかは、ないし。多分死んだら、生き返ることは出来ない。
ゲームの世界に、入り込んでしまうこと。
これが、小説とか漫画で見かけた、異世界転生、ていう奴なのかもしれないけど……。
……正直、転生した人達が、その後どうなってんのかとか、全然知らん。
寿命が尽きるまで生きられるの? それとも、向こうに帰れて人もいるの? うーんうーん……分かんないぞー!
全く読んでこなかった自分を、もう何度目かだろう、心から悔いていると、ルカがオレの頬に触れた。
「難しい顔、似合わねえ」
ぷ、と笑いながら、両頬をぶにぶに解される。もー潰さないでよ、と抵抗してると、リアがまた続けた。
「じゃあ、ソラの家族はどんな人達?」
「んーと……父さんと母さんと、兄貴だよ。……どんなっていっても……普通かなあ。父さんはサラリーマン……て言葉ある?」
ルカを見上げると、「無いな」と首輪振る。
「そっか、んーと……会社っていうところで、働いてて。母さんも、近所のお店で働いてて……兄貴ももう、働いてる。六こ年上。|凛空《りく》って言うんだ」
兄貴の名前にも「空」っていう漢字が入るんだよと言いかけて、ここには「漢字」が無かった、と話すのをやめた。
「兄貴は、似てんの?」
「兄貴はねー、なんかすごい、カッコいい。頼れるし。あんまり似てないなぁ……」
ゴウの質問に、そんな風に答えてると。
ルカが不意にオレを見て、む、としてる。
「……ん?」
何。急に。
……なんか不機嫌。
「……ルカ?」
「ソラは、兄貴が好きなのか?」
何その質問。全然意味が分からないまま、ルカを見つめる。
「うん、好き、だけど……年離れてて、可愛がってくれてたし……??」
ルカは、何でブスッとしてんの……?
「……ね、ルカ、兄貴の話だよ?」
女の子の話とかじゃないよ?
何だかどう見ても、そんな類の雰囲気を感じて、首をかしげていると。皆がクスクス笑い出した。
「ソラの世界って、兄弟では、結婚は無い?」
「……無いよ? えっあるの?」
「基本的に、ダメってことはないから。愛があれば」
……衝撃的すぎる。
でも向こうでも大昔の偉い人とかは、家族間でもあったんだっけ……?? あれでもそれは男女だったっけ……。よく知らないけど、そういうこともあったような。
え゛え゛っ。ルカは、じゃあ今のオレの、カッコいいとか、好きとか、頼れるとかを、そっちの意味で……。
正直、とんでもない濡れ衣?に固まってると、皆とオレのやりとりを聞いていたルカが、やっと険を解いた。
「まあ、小さい頃から居る兄弟とそうなるっていうのがほとんど無いから、数は少ないけどな……」
なんて言いながら、ルカの手が、オレの顎に触れる。
「ほんとにここ……自由だね。オレ、絶対兄貴とは無いからね」
もう、そう言うしか、無かった。
んー、びっくりだな、もう。
まだまだびっくりすること、あるんだな、ここの世界。……ていうか、こんなのに反応する、ルカにもびっくり……。どんだけ……??
ルカの顔を見ながら、しみじみそんなことを思って、苦笑いが浮かぶ。
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