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「再会、だった」

「まあオレらは、人の前に姿を出さないことにしてるからさ。ルカ達からソラを無理無理に奪い取るとかも嫌だしさ。神様がそんなほいほい手を出したら、つまんねえし――だから、とりあえず、落ち着いてからにしようってことで退散したんだよね。ルカの側に居れば、ソラも死ぬことはないだろうと思ったし。……まあ、大体、そんなとこ」 「――ぅん……」  一生懸命聞いてた話がとりあえず一段落したみたいで、オレは、頭ンなか、必死に整理する。ひとつ、全然分かんないことがある。 「あの……動物とオレが同じ念っていうのは、何? それが分かんない」  首を傾げながら聞くと、カノンは、んー、と考えながらオレを見つめた。 「――お前さぁ、白い猫と関係あった? 飼ってたとかさ」 「……白い猫――あ!」  思い出したのは、河原で出会って、可愛がっていた子猫のこと。アパートに連れ帰ろうとしていたのに、ある日突然いなくなっちゃったけど――。あの子以外、白猫に覚えはないけど……。 「そいつ、事故か何かで死んだんだと思う。死ぬとき、お前のことを強く想ってて、その想いが念として、お前にまとわりついてたんだよな、きっと」  カノンが軽く肩をすくめた。 「それでオレ、勘違いしちゃってさ……でもさ、オレのせいじゃないよな? そんな些細な残った念まで感知できるなんて、すごくねえ? オレ」 「……」  カノンがドヤ顔してるのを、正直ちょっと殴りたくなる。でも……殴れない。神様らしいし。怒らせたら、とんでもないことになっても困るし。そもそも、オレ、人殴ったことないしな……それに、まだ知りたいこと、いっぱいある。  腕の中のミウをナデナデして気持ちを落ち着けながら、質問してみる。 「あの猫は……死んでもオレを想ってくれたって、こと?」 「そう」  うんうん頷いたカノンの隣で、ずっと黙ってたゼクスがオレを指差し……いや、オレの腕の中を指差した。 「ソラの世界に送ったのは、そいつだよ」  ゼクスがぽつりと言う。  ミウを、指さしてる? 「……えっ?」  思わず、腕の中のミウを見つめる。まさかと、思って。 「そいつをソラの世界の動物に姿を変えさせて、送ったんだ」 「……え、まさか…… あの、白い猫って……ミウ、だったの?」 「そう。――しかもそいつ、ソラの世界で命を手放した後、元気にこっちに転移したっぽいんだよ」 「――転移? ……生まれ変わったんじゃなく?」 「生まれ変わったんじゃなくて、もとのまま、こっちに戻ったみたいなんだよな。白猫だった時の記憶があるから、お前に懐いてるんだろうし……」 「――他にもミウがいるなら、他の子だったってことは……?」 「ない。同じ種類の生き物でも、そいつを取り巻いて感じる念は違う。あの時、ソラの世界に送ったのは、確かに、そいつだった」  ゼクスの言葉に、返事が出てこないオレに、カノンがちょっとおもしろそうな表情で。 「ミウってさ。かなり特殊で、普通の魔物じゃなかったんだよ」 「……?」  そういえば、ミウはレアな魔物、とはリアたちにも聞いたなあと思い起こす。どう普通じゃないんだろうと思ったオレに、ゼクスが続けた。 「ミウは、創神の作った世界に結構な確率で何匹か現れてるらしい。ソラの世界に送った後で、そういう存在だと知ったけど、一匹くらい、魔王と入れ替わるまでの間だし、良いかと思ったんだが――」 「――――……」  そこらへん、どれくらいの間なら良いのかとか、細かいことはよく分かんないけど、なんだかなぁと、ちょっと眉が寄る。 「……アバウトだよね、なんか、色々……カノンもゼクスも……」  オレの皮肉を込めた言葉に、ゼクスがとっても嫌そうな顔をした。その横で、カノンが肩を竦めさせながら言った。 「たった一匹しか居ないお気に入りならすぐ戻したけど、何匹も居るならいっかなーと思ったんだよね」  すると、ゼクスもため息をつきながら。 「ミウには、別の世界で死んだら元の世界で新しく生まれ変わるっていうルールすら効かずに、ただ普通に戻ってきていたから……オレ達にはよく分からない能力を、創神に与えられているんだと思う。お前のことも、こっちの世界で、見つけたのかもしれない」  その言葉を聞きながら、じ、とミウと見つめ合う。  今言われた言葉が――白猫の世話をしてた思い出と、こっちに来てからミウと過ごした日々に、重なっていく。  ミウが、オレに、こんなに懐いてくれてたのは。  ――白猫の時の、記憶があるから?  覚えてて、くれたのか。  ほんの数日しか、可愛がってあげられなかったのに。  胸が熱くなって、じわっと涙が滲んで、それがすぐにあふれて、零れ落ちた。 「みゃ……?」  オレの顔を不思議そうに見上げたミウは、首を傾げて、それから、ひし、と抱きついてきた。 「……っ……ミウ~~!……」 「みゃあ……」  ひし、と抱き合う。

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