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「動物と同じ念?」
「――――で、ルカがもう少しで魔王を倒そうとした時に、話が進むんだが」
「あ、うん」
「ルカが魔王を倒した瞬間に、向こうで変身させていた動物をこっちに戻すつもりだったんだよ。かわりに魔王は元の世界に戻して、それで全て終わるはずで――ルカの世界は魔王が居なくなったら、あとは人間たちが好きに生きてく世界になるはずだったんだよ」
そこまでゼクスが言った時。
「こっからは、オレが話すー!」
カノンが急に声を上げた。
「――好きにしろ」
ゼクスの少し呆れた反応に、カノンっていつもこんななんだろうなぁ、と思っていると、カノンが続きを話し始めた。
「んでさ、魔王だった奴を、元の世界に送ろうとしてたんだけど、どこから連れてきたか覚えてなくて、ここらへんだったはず、とか思って見てたら――ちょうど同じボス戦で、魔王を倒そうとしてるゲームの画面が見えたんだよ」
……ん?
それって。
「……それって、もしかして、オレのやってたゲーム画面?」
「そう、当たり」
「……え、家の中なのに見えるの?」
「見える。こっちからは、全部透けて見えるからさ。お前がプレイしてるとこが、ちょうど見えたんだ」
得意げなカノンに、自分の眉がおもいっきり寄るのが分かる。
……これからは、いつも誰かに見られてると思って、ちゃんとして過ごそう、とか思いながら。
「オレのゲーム画面が、見えて、それで何なの?」
とにかく、なんかここで一気に、オレが関係してきた気がする。
「もうここでいいやと思って、お前のテレビと、この世界を繋げたんだ。まあ別にどこと繋げてもいいんだけどさ。せっかく同じ魔王と最後の決戦してたし。なんか嬉しくなってさ」
「……は?? オレの部屋に、元魔王を出そうとしたの?」
「まあ、世界をそこで繋げたら、魔王自体は、部屋の外に出すつもりだった」
あ、オレの部屋じゃなくて、実際は部屋の外??
……ってひどくない?
「突然そんな知らない場所に飛ばされた元魔王はどうなんの?」
「そのまま、何も疑問に思わず、家に帰るように暗示をかければいい。魔王だったことは忘れさせるし、それで終わり」
「――――」
「ここまで分かった?」
「――ん」
……分かった、ような気はする。でも、なんか、色々聞きたいことがある気もするのだけど、何を聞けばいいんだか、咄嗟に浮かばない。
「……じゃあ、それで?? それでなんなの?? 何でオレは、こっちの世界にきちゃったの?」
「だからさ……ルカが最後の一撃をくわえて魔王を倒したら、魔王を人間の世界に戻すつもりだったって言ったろ? 本来なら、送ってた動物を探して、こっちに持ってこようと思ってたんけど……その動物が見つからなくてさ」
「どーいうこと? 何で?」
「念じて探したけど見つからなかったんだよ。まあ、送った先の世界で死んでたら、そういうこともあるんだよね。そういえば死なないように結界はっとくのも、忘れてたし」
「……死んじゃってたら、その時はどうすんの?」
「その時は、元の世界でまた生まれ変わるだけだから、それで命のバランスはとれる。だからもう、魔王だけを戻せばいっかと思った時に、あることがあってさ」
カノンが、不意に、オレを指差した。
「ゲームをしてたソラから、その動物と同じ念がしてさぁ……『あれ、こいつだっけ??』って混乱しちゃたの――で、ついつい、間違ってソラをこっちに引っ張ってきちゃったって訳」
「……はー?? どういうミス、それ」
「こっちも焦ってたからさぁ」
……何言ってんのか、全然、意味が分からん。ミス多すぎません……?? まあオレも人のこと言える感じではないんだけどさぁ。それにしたって、神様なんじゃねーの? ……って、全然それっぽくないけど。
「ゼクスがさ、珍しく焦って、バカちがう、動物だったろ、とか騒ぐからさ。余計に狼狽えてたら、ソラはルカのところに落ちていくしさぁ……でもって、ルカが間抜けすぎて、魔王を逃がすしさ」
……ルカ、起きろー!
色んなことミスってる奴に、間抜けすぎて、とか言われてるぞー!
そんなことを思うけど、ルカはぐっすり眠らされてるみたいで、さっきからぴくりとも動かないので、口に出すのはなんとか堪える。
腕の中でほわほわと大人しくしてるミウの毛を、ひたすらもにゅもにゅしつつ、感情を押さえながら、理解しようと頑張る。
(2025/5/16)
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