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「目覚める」

「どんなって……?」 「オレらに感じ取らせない程の強力な結界なんて、結構な力を使うはずなのに、ルカ、ずっと張ってたんだよな」 「――――」 「つか、オレらから見えない結界って、そもそもなんだっつー話……」  呆れたように、倒れたままのルカを見下ろして、ため息をついてる。 「ソラ、さっき、魔王のとこに居たんだろ? お前の気配、感じて見に行ったら、魔王とルカが居るし、なんな訳?」 「――魔王の結界の中に居た時も、オレのこと、見えなかったの?」 「そう。つか、その前にも、一瞬、気配を感じたんだよな。でもすぐになくなったから、なんだろうとは思ってたんだけど」 「それって多分……ルカの結界から出て、魔王のところに飛ばされる瞬間、かな……?」  不思議そうなカノンに、思い当たることを聞いてみると、ゼクスが、それだな、と頷いてる。 「――そういうことかぁ。ルカも魔王も、なんでお前に結界を張りまくってるんだ?」  カノンはめちゃくちゃ不思議そう。 「……魔王は、多分、ルカに見えないように、だと思うけど」 「じゃあ、ルカは、なんで?」  はー、とため息を吐くカノンと、隣で黙って考えてるっぽいゼクスを見ながら、オレも、考える。  魔王の結界の理由は、今言ったとおり、オレを、ルカに見せないためだよね……。  魔王がオレをさらったのは、自分が魔王としてルカの世界にきた時の光と、オレが現れた時の光が、一緒だったからって、言ってたから――あれだな、自分がどこから来たのか、知りたがってたって話だ。  ルカは……オレをルカの世界に送った奴がいるなら、そいつに見えないようにって言ってた訳で。  ――神様二人が不思議がるような、そんな強力な結界を、ずっとオレに張っててくれたんだなぁと思うと。なんだかちょっと感動して、また涙が滲む。  とにかくさ、とカノンがまた話し始める。 「さっき、お前の気配を感じた時も、本当は、そのまますぐ元の世界に返そうと思ったんだ。こんな説明はせずに、元の世界に返して、ソラもルカも、お互いのことは忘れさせればいいし……全部が元通り、あとは、さっさとルカが魔王を倒して、魔王を戻せばいい、とも思ったんだけど……」 「……けど、何?」  オレは首を傾げながら、腕の中のミウを、よしよしと撫でる。  元の世界に……無理無理戻されて、ルカのこととか、忘れるとこだったんだと思うと。それが、本来そうあるべきだと思うのに、切なさに、泣きそう。  ……もう今のオレにとって、ミウのフワフワは、かなりの精神安定剤だ。  ゼクスとカノンは、顔を見合わせて、眉を寄せた。 「ただ、あれだけの結界を張ってまで、守りたかった奴を、ルカがすんなり忘れてくれるのかっていうのが気がかりで――ルカは、色々規格外なんだよな。ソラのことを思い出されて、居なくなったダメージで魔王を倒せないとかなったら困るし」  そこまでカノンが言った時、横たわっていたルカが、不意に動き出して、額を押さえながら体を起こした。 「あ。ルカ……!」  ミウは、オレの腕からふわりと浮いて、オレは、ルカの隣に膝をついた。よかった、目が覚めて。  なんだかものすごくほっとして、またまた涙が浮かぶ。  ルカは、ぼんやりした顔をしてる。  まだ目を開けたばかりで、状況とかは何も分かってないと思うのに。    ふ、とオレに視線を向けて、顔を見つめた瞬間。  「ソラ」と名を呼んで、そのままオレを引き寄せた。 「……何、泣いてンだ」  そう言って。腕の中に、守るみたいに。  ……よけい、涙が、滲む。  すると、カノンが呆れたようにため息をついた。 「――だからさぁ……なんで勝手に目覚めるわけ? 起きれるはずないんだけど……」  ほんと嫌、と、カノンがぼやいている。

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