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第2話

 田舎は娯楽が少ないから。漁師や民宿をやってる親達は忙しくて子供にまで目が届かないから。子供たちは子供たちで遊ぶしかない。そうやって育つ子供たちは早熟だ。  勇魚がそうだと気がついたのはいつなのか。  多分、俺はそうじゃなかった。勇魚以外の男に興味はなかったから。  誘われて、女と寝たのは小学生の時だった。  それを勇魚に打ち明けると、勇魚は目を伏せた。白い手が膝の上で震えて、白い顔の中のピンク色の唇がきゅっと閉じた。悲しそうに歪んだ顔。 「なかないでよ。いさな」 「泣いてないよ」 「もう、しないから」 「ないてなんか、いないよ」 「じゃあ、もう、いさなとしか、しない」  幼い俺の言葉に、はっとあがった視線。 「いさなと、するから」  伸ばした手を、勇魚は拒まなかった。重なる唇を受け入れた。  魚が海の上に腹を見せながら跳ねるように、勇魚の白い喉が跳る。俺はうっとりとそれを眺めながら、何度も白い肌を撫でる。 「だいてもらえた」  喜びに震える声。流れる涙。  お互いのものでぬるつく指を重ねて、その涙を吸い取った。  そうして俺と勇魚は秘密の恋人同士になった。  それから何年が過ぎたんだろう。  気がつくと俺は高校二年生に、ひとつ年上の勇魚は三年生になっていた。  俺達の関係を怪しいと思う人はいたかもしれない。けれど、やはり生活するのに精一杯の忙しい人々は、二人して兄弟のように仲良しで手のかからない俺達のことを詮索しようとはしなかった。男同士で幼馴染であるということが人々の目から俺達を隠していた。

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