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第6話
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~おまけ~
12月20日 夜半前――。
「さてでは――」
「? ・・・ええ、はい」
「ちょっと早いが・・・そろそろオレたちも休むとしようか・・・?」
「ええ・・・はい征さま」
・・・とこんなふうに。
素直にうなずいてみせた・・・高校生の姿を保ったままの最愛の妻の手を引き、寝所に誘い込んで。
そして。
「せいさま」
「せー・・・さま・・・」
「ん?」
「も、も・・・ど、して・・・?」
「どうしてって・・・それはお前が一番わかってるんじゃないのかい・・・?」
「で、も・・・」
「だーめ。約束したろう?」
「……」
「テーツーヤー?」
「だってぇ」
普段はダメでもせめて・・・睦言の間くらい征十郎と呼びすでにしてほしいのだと。
言わないならこちらにも考えがあるよと――要はイかせてやらないよと。
飽きるくらい何年も何年も・・・数えきれないくらい言い聞かせたってそれでも。
これほど長く夫婦(めおと)として連れ添い、夜ごと抱いても未だ――。
どうしても恥じらいや戸惑いや遠慮が勝ってしまい。根っからの大胆不敵さが・・・赤司がここぞと願う場面でなぜか発揮されず、影を潜めてしまうから。
よって今宵もまた――。
ならば受けて立つまでと。お前が相手なら、なら決して諦めもしないし。
まして飽きるなどありえないからねとでも言うように、闘志を滾らせ。
これでもかと・・・この場に不要な理性などさっさと捨ててしまえと言わんばかり。
勝手知ったる急所ばかり執拗に攻めたて、絶頂寸前で焦らしてと・・・。
そんなふうにとことんまで追い込んでやらないと乱れてくれない黒子がとうとう――。
「は、ぁんん・・・! や、や、も・・・う、いじわ・・・るしな、でぇ・・・!」
「ゆる・・・して・・・」
「こわれ、ちゃ・・・ぅ、から・・・」
逃げられないように上から圧しかかられ、互いの身体が溶け合うくらいガッチリ抱きしめられ。
けれど肝心の律動はといえば、いっかな激しくも深くもなることはないまま・・・ゆったり浅めのストロークで揺すぶられ。だから一番欲しい最奥はずっと放置されたままで。
・・・がそれでも。たったそれだけでも。
ナカのヒダが伸び切るほど大きくそして硬い勃起さえあれば。抱かれなれた身体はそれだけで・・・。
自身を犯す肉を食いちぎらん勢いで締め付け、絞り取るように絡みついて昇りつめようと貪欲に蠢くのに。
なのに。あともう、ほんの少しだというのに。
「せいさ、ま・・・も、ダメ、(な)の・・・ね、がい・・・」
絶頂の予感にガクガク震え出した腰と内ももの動きを察知するや、ピタリ腰の動きを止め・・・。
これみよがしに――大粒の涙をこぼし、桃色に上気する眦に口づける鬼畜・・・もとい、いけずな夫の肩口にぐりぐり汗まみれの額を押し付けたり、カプカプ甘噛みしたりしつつ――引き締まった腰には脚を巻き付け・・・。
・・・けれど。いっかなもどかしさは解消されず。
だからとうとう――。
たらりたらりとめどなく先走りを吐き出す陰茎を割れた腹筋にいやらしく擦り付けながら途切れ途切れに・・・熱に浮かされたようにイキたい、イかせてと懇願する黒子に。
「それならほら。どうすればいいか・・・わかるよね? テツヤ」
「ン、ン・・・」
「ほらテツヤ・・・」
「じゅ・・・、ろ」
「うん、いいね。その調子」
「ん。・・・せーじゅ、ぅ・・・ろ・・・」
昼間の赤司の制服姿があまりに魅惑的だったせいか。
それとも。その美貌が男女問わず・・・彼と行き交う生徒たちすべてを一瞬で、かたっぱしから陥落したがゆえなのか。
はたまた――体育館にて軽やかに決めてみせたダンクのせいか。
いっそそれらすべてか。
いつにも増してたやすく燃え上がり、瞬く間にギリギリのところまで昇りつめ――ぐずぐずのとろとろに蕩けたその・・・この上なく淫らな様に、してやったりと内心ほくそ笑みながら。
ここまで来たならもはや逃げる気にもならないだろうと、抱きしめていた腕の力を抜き。
キングサイズのベッドにすっかり・・・少年の姿に変化したままの肢体を預け。
「・・・ほらもっと呼んでごらん・・・?」
「そしてもっともっと――オレを欲しがってくれ」
「・・・・・・せー・・・じゅーろ、」
「うん」
「せーじゅ・・・ろ」
「イイコだテツヤ。よく言えたね」
「言った・・・から。も、はや・・・くぅ」
互いの体温が混ざり合うくらいピタリ密着していた身体が離れたのを寂しく思ったか・・・一瞬ゆらりと揺れたスカイブルーを、真上からのぞき込み――。
純白のシーツに投げ出されていた両の掌を掬い上げ。これみよがしに恋人つなぎしながら「愛してる、テツヤ」と告げ、利き手の甲に口づけては・・・。
「ああ、わかってる・・・ちゃんとご褒美あげるから。待ってて・・・ね?」
心配なんて必要ないよ、と。
オレだってとっくに限界なんだ。これ以上のお預けなどむしろこっちが願い下げだと言わんばかり――。
繋いだ両の手を己の首に巻きつけさせ「しっかり掴まってなさい」と言い聞かせ再び華奢な身体を抱き留め直して。
そうしていよいよ・・・。
入り口あたりまで押し戻されていた勃起を一気に最奥まで押し進め。
「ぅ、ぁ!? ぁ、ぁ、ぁぁぁ・・・ハッ、ァァンン‼」
その突然の激しい突き上げに、脳天を撃ち抜かれるような強烈な快感に意識と身体が着いていかず。
背を、頭を弓なりにしてのけ反らせ衝撃に身もだえる彼がもたらす・・・。
「や、や、もう・・・だめ、だ・・・め・・・きちゃ・・・いっちゃ・・・ぅ、から・・・」
「・・・っ、く、ハッ・・・いくらイっても構わないが・・・飛ぶのはダメだからね? テツヤ」
ぎゅうぎゅう絡みつくような、問答無用で子種を搾取するかのような蠕動に・・・うっかり釣られ、達してしまいそうになるのを必死に堪えながら。
まだまだ夜は長いんだ。気がすむまで付き合ってもらうよ? だとか、全部受け止めてもらうからとか――妖力の差など端から度外視したあまりに無情な宣告を・・・もとい。
海より深い愛情を、その身をもって存分に示す大妖怪様に――今日も今日とて翻弄されっぱなしな・・・世界一愛され上手な座敷わらしでありましたとさ。
――めでたし、めでたし。
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