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第5話
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「いらっしゃい黄瀬く・・・って、わ?!」
「(みんなでストバスしようって)お盆に集まって以来スね! 黒子っち♡ 元気にしてたスか?」
先発隊を迎えるため、勇んでかけてきた小さな身体をひょーいと抱え上げ。
やった捕まえたと、もう離してやるもんかと・・・モッフモフなしっぽをブンブン振り回し全身で喜びを表しながら、ここぞとばかりに頬ずり・・・マーキングする妖狐から――。
「は!? ・・・なんっ? ちょ、まっ・・・! 青峰っち!!」
「よぉ、テツ久しぶり! つか、お前相変わらずちっちぇーし軽ぃけど・・・ちゃんと肉食ってっか? 甘い菓子ばっかじゃ、いつまでたっても大きくなれねーぞ?」
「いえ、いつまでたってとか言われても・・・そもそも「もーーー! オレが先にダッコしてたのに! 横取りすんな! 黒子っち返せ!」」
「やーなこったー!」
着いて早々に――勝手知ったる他人の家で、小さく愛らしい童の子を取り合い・・・追いかけっこを始めた妖狐と鬼たちの様子を・・・。
――やれやれまたいつものが始まった。寄ると触るとすぐこれだと・・・ため息吐きながら、あきれ顔して見送る・・・天狗に、ぬりかべに、狛犬に、雪男に・・・酒呑童子にと――。
だだっ広い玄関が狭く見えるほどに大柄で、存在感・威圧感ともに十二分な仲間たちに向かい。
「やあ今年もよく来てくれたねみんな――さあ早速中へ・・・遠慮せず上がってくれ」
・・・と一声をかけたのち。
肩に引っ掛けた曼殊沙華色の羽織を翻し、颯爽と前を行く総大将のあとに続きながら――。
「ああ、今年も世話んなるぜ」
「黒ちんにも赤ちんにもみんなにも・・・お菓子やお土産いーーーーっぱい持ってきたかんね~」
「今年はアツシと二人、道の駅巡りをしてきたよ」
「オレは――猟友会の人らに頼まれてイノシシ狩り手伝ったら、そしたら・・・その礼につって肉くれたんで、鍋にでもするかって思って持ってきた!」
「・・・いいね。きりたんぽにも合いそうだ」
「だろ?! ・・・から後で仕込み手伝ってくれな? タツヤ」
「もちろんまかせてくれ!」
「ほ~ん。今年は牡丹鍋かいな・・・。けどそれきりたんぽだけやのーて、ワシが持ってきたこの・・・幻の酒って評判の大吟醸との相性も良さげやし? めっちゃ楽しみやわぁ♡」
「え~・・・クリスマスケーキに鍋と日本酒~? それどう考えても全然合わなそうなんだけど~?」
それぞれが持ち寄った土産の話題で盛り上がりながら・・・約半年ぶりの会合を喜び、笑顔の花を咲かす彼ら――に釣られ。
「ハハハ。イブの晩にシシ鍋と大吟醸で乾杯とは・・・まさにオレたちらしくていいじゃないか」
日本の妖怪がクリスマスパーティを開催してる時点で、ミスマッチにもほどがあるんだ。
こうなったらなんでもありだよなんて――王様然として朗らかに、鷹揚に笑ってみせながら。
「だいじょうぶ。テツヤがお前(と自分)のためにって、アップルサイダーやジンジャーブレッドや、フルーツケーキや・・・って張り切ってかたっぱしから注文していたから、きっと心配いらないよ」
「やった。さすが黒ちんよくわかってんじゃーん♡」
「ハハ、まったくお前たち三人ときたら・・・まだ着いていない緑間も含め甘い菓子類に目がないね」
「え~、だって美味しいんだもん仕方ないんだし」
晩餐のメニューに不満たらたらなぬりかべ・・・いや今この時に限ってはお菓子の妖精の曲がった臍も元通りに治してやって・・・。
・・・とこんな具合に。
この日より約二週間に渡って続く、行く年くる年合宿の幕を切って落とした・・・・・・愉快な? 妖怪たちであった――。
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