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雪虫2 15
「や……別に……珍しいなって、だけで いいと、思うけど」
歯切れの悪さは言葉とは裏腹なオレの心を代弁してしまったと思うのに、みなわは小さく困ったように笑って返した。
「なんや、やっぱええ家庭で育てられたんやね」
そう言うと細い、今にも折れるんじゃ ってハラハラさせる腕を伸ばしてオレの頭をぐりぐりと撫で廻す。
まるで小さい子でもあやすかのような態度は腹立たしかったけれど、触れにくい問題にきちんとした返事を返せなかったのが心苦しくて、黙って撫でられるままにしていた。
ぱたりぱたりと団扇で風を送られて、居心地悪くみなわのゴツゴツと骨ばかりの足から頭を退けようとしたけれど、叶わないまままたぐったりと頭を降ろす。
「あかんて、もうちょい大人しゅうしとき」
「……すみません」
「湯あたりする前に言わな」
もう一度もごもごと口の中で「すみません」と呻き、茹だったせいかふわふわとした心持で温泉の休憩所の天井を見上げる。
普通の建物よりも高く作ってあるせいか解放感があって、明るくて……
涼しい風も吹きこんでくるから火照った体にはちょうど良かった。
「大きなった思ってもまだまだ子供なんやね」
その言い回しに引っ掛かりを覚えなかったわけではなかったけれど、それよりも子ども扱いされたことの方が腹立たしくて、ぶっきらぼうに「子供じゃないですよ」って言い返す。
オレのその物言いが面白かったのか、団扇でオレを扇ぎ続ける手を止めてくすくすと笑った。
「せやな、もう番になる相手まで見つけてんもんな」
しみじみとそう言うと、また再びぱたり ぱたり と団扇を動かす。
気まぐれに届く風が思いの外気持ち良くて、みなわに膝枕をされている なんて気まずい事態にも関わらず、ほっと息を吐いて体の力を抜いた。
微かな風と、眩しくない程度の明るさと、それから血行が良くなったせいで感じる気だるさに、ふわふわとした心地が気持ちいい。
「 なぁ、その子は、可愛いんか?」
「え?雪虫?めっちゃくちゃ可愛い!可愛いし、キレイだし、いい匂いするし、ふわふわしてるのに芯が強くて、オレのことを一途に見てくれるのがすげぇ嬉しい」
「ふふ なーん?ノロケなん?そんなことまで聞いてへんやん?」
「う でも、他に聞いてくれる人がいないし」
直江は興味なさげだし、
瀬能は揶揄うし、
大神は一蹴だし、
セキは何故だかいつの間にか大神とのアレやコレやの話になってしまう。
「そうか、ならしょうがないな、聞ぃちゃるか!」
にこにこと嬉しそうな顔は、気のいい近所のお兄さん的なイメージだ。
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