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雪虫2 16
「雪虫は、ちっさくてふわふわで可愛いし、肌も白いし、キレイな金髪だし、青い目なんか吸い込まれるんじゃないかってくらいキレイで、オレはいつまでも見詰めてたいなぁって思うんだよ。でも前にオレがそれを言ったら、目が痛くなるまでずっと開いててくれてさぁ、健気でしょ?それで涙ぽろぽろながすからさぁ、あー舐めたいって思っちゃって 」
「あ、なんか、聞いてくれる人がいないって言うんわかったわ」
言葉を遮られて思わずがばりと起き上がる。
「聞いてくれるって言ったじゃないか!」
「いやまぁ、遠慮もなしに言うとは思わんかったやん?」
う゛ と言葉を詰まらせると、みなわは膝を叩いてもう少し横になるように勧めてくるから、丁重にお断りして座り直す。
まだ少しふらふらはするけれど体を起こせないわけじゃない。
みなわは気にしないのかもしれないけど、オレとしては他のΩの膝枕でのんびりしているなんて、なんだか雪虫に対して後ろめたくて仕方ないだから。
「しかし、しずるのお相手は外人さんなんやね」
「?」
「金に青い目って言うとったやん?」
そうみなわに確認されて「あ!」と声が出た。
オレが頓着なかったせいもあるし、雪虫が日本語を話していたせいもあるんだろうけど、話だけ聞いた人がそう誤解するって言うことをすっかり忘れてしまっていたらしい。
「や 違くて、雪虫は……色素が、えっと そう言う体質なんだって」
雪虫の体のことを調べて、文章を読んだ時はなるほど と思ったし、文章自体はまるっと覚えてはいるけれど、それを人に噛み砕いて説明できるかと言えばそれは別問題だった。
うまく説明できなかったことが恥ずかしくて、視線を下げてもじもじと膝の上の拳を見詰める。
「ふぅん。そう言う子もおるんやねぇ。そう言えば、大神さんは次いつ来るんやろか?」
「え?」
急に変わった会話は、オレの心の内を察して逸らしてくれたのかどうなのか……
真相は分からなかったけれど、それでもみなわが話を変えてくれたのが有難かった。
「今日も来るって聞いてるし、大体二日ごとに来てるかなぁ?この前みたいに研究所に寄ってから来るって言ってたから、同じように少し遅くなるかも?」
大神の行動は基本的にオレに教えられることはなくて、いきなり訊ねてこられたりして肝が冷えることがあったりもするんだけど、今回はこの実験のせいかどうなのか直江から事細かく聞かされることが多い。
「そうなんか、じゃあケーキ買うんは明後日にしよか」
ケーキと聞いて、そわ となってしまうのはこの間みなわが買ってきたケーキが美味しかったからだ。
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