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雪虫2 20
「あの……」
そろりと唇を舌で湿らせながら問いかけると、大神はうるさい蝿でも見るような目でこちらを一瞥してから、それでも「なんだ」って促してくれた。
別に悪いことなんてしてないと言うのに、責め立てられているような気がして早口で捲し立てる。
「なんかテクニックとかないのかな⁉︎こうしたらいい!とかっああしたらいい!とかっちょっとでも気持ちよくさせてあげたくってっコツとかっそう言うのをちょっと教えてもらえたら っ」
ふぅ と煙を吐きかけられて言葉が詰まる。
盛大に咳き込みたくなったのを涙目になりながら堪えて、すがるように大神を見ていると呆れたようなため息が漏れた。
「真剣に何をほざくかと思えば」
「真剣だよ!雪虫にはちょっとでも嫌な思いとか、痛い思いさせたくないし!」
「だから経験を積めと散々言っておいただろう」
ぐ と言葉が詰まるけど、そんな練習のために他の人間と……なんて考えはオレにはない。
そう言うことは、好きな相手とだけやりたいって思うのは、ダメなんだろうか?
そりゃ……オレだって男だし、そう言うことに興味がないわけじゃないし、誘惑は魅了的だと思うけれど……
「それは、雪虫と積んでいくからいいんだよ」
ゆるく開けられた唇から漏れたのはため息なのか煙草の煙なのか。
「それとも、そう言うトコって絶対行くものなんか?」
ジジィはどうだったか知らないし、社会に出た場合の話をしてくれるような大人は周りにはいなかった。
そう言うもの と言われてしまえばオレには絶望しかない。
「つまらん付き合いだけだ」
そんな付き合いがあるのか、必要なのか、それすらオレには分からなかったけれど、大神がわざわざ面倒臭い嘘を吐く理由がないのを考えると、ぽろりと漏れた事実なんだろう。
付き合いって言われて友達付き合いをしているイメージが湧かないから、仕事でってことなんだろうけど……
「わざわざ男娼まで用意されては、相手の顔を潰すわけにもいかんだろう」
「?」
「底があるから入りきらない とでも言っておけばいい断り文句になってたんだがな。男オメガではそれも通じん」
ほぇ?と思わず変な声が出た。
底……と言われても何かわからず、きょとんとしてしまったオレを見て、大神は珍しく片眉を上げて苦笑を見せる。
「童貞が」
揶揄いを含ませたような笑いのお陰で、遊び馴れた人間ならわかる意味を掴み損ねていることはわかったから、とりあえずムッと顔をしかめておいた。
大神が研究所に寄ってからこちらにくると言うことは、前回のように少し遅くくると言うことで……
雪虫のおやつも作り終えてしまったオレは手持無沙汰で、瀬能にコーヒーを出したついでにリビングのソファーに腰を降ろす。
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