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雪虫2 23

「みなわくんも、育ちがいいと思うよ。茶化して崩してはいるけれど、彼の食事の仕方は綺麗だし、食べ終わった後も綺麗だろう?ずいぶんと厳しく躾けられたみたいだから、固い家庭で育ったんじゃないかなぁ」 「へぇ 」 「言葉とかで出身もわかるんだけど、彼のあの言葉遣いは廓詞らしいからどうだろうなぁ、あそこまでがっつり使われると……」 「廓?」 「ああ、勤めている影楼では出身地を誤魔化すために出身じゃないところの方言を覚えるんだってさ」  出身がばれると良くないんだろうか?なんて思いながらふんふんと頷く。 「まぁ詮索するのは無粋だろうけど、いろいろと知りたいんだよねぇ……せっかく見つけた任意発情オメガだからさぁ」  にこ……と言う感じではなく、にちゃぁ と笑う瀬能はマッドサイエンティストに見える。  瀬能の目にはみなわは実験動物か何かに見えているに違いない、まぁ……オレも含みなんだろうけどさ。 「出身地が分かればそこのオメガを調べて他に任意型がいるのか調べられるしなぁ、しずるくんはナニか知らない?君達裸の付き合いしたんでしょ?」 「いかがわしい言い方しないでくださいよっ雪虫の耳に入ったらどうするんですかっ」  飛び上がって怒鳴ると、さすがに悪いと思ったのか瀬能は肩をすくめながらごめんごめんと繰り返す。  人をおちょくるのは別にいいけど、あらぬ誤解を招きそうな言い方をされるのはたまらない。 「まぁ、何か気付いたことないかい?」 「え、えー……」  言っていいのか って葛藤はあったけれど、身を乗り出して聞き出そうとしてくる瀬能の迫力に押されてぽろりと言葉が漏れた。 「なんか大きい怪我したことがある?くらい?」 「怪我?」 「傷跡が残るくらいの……腹のとこに刺青があって、傷跡を隠すためだって」  薄い腹に咲いた赤い花を思い出しながら腹の下の方を指ですっと撫でると、瀬能はこてんと首を反対側に倒してうーん?と小さく唸る。 「しずるくん、お砂糖欲しいかな」 「あ、はい、持ってきます」  脈絡もなく砂糖を要求されて、席を立つきっかけが出来たとばかりに飛び上がるけれど……  両手の指先を合わせて首を傾げ続ける瀬能は、オレのことなんかもう眼中にないようだった。 「  って、ことで、密かに言われているのがオメガに子供を産ませると親のアルファの能力を丸っと引き継ぐって言う噂だよ」 「えー……なんすかそれ」  瀬能も話す内容がなくなって来たのか、最近はちょっとアレな内容が多い気がする。

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