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落ち穂拾い的な 君と手作りの楽園で
君はここから出て行くことができなかったはずだった。
駅に向かう道は通れないし、もう一つの道は一人では通れない。
なのにどうして、君は消えてしまったのか……
「わかりません、玄関から出た様子はないし……あとは窓ですが、あの子の部屋は二階なので」
「どうしてこんなことになったのか……私達はあの子が病気でも支えるつもりでした」
支える「つもり」だった。
すでに過去形になった言葉尻と、どこかほっとして見える倫の両親に何度殴り掛かろうとしたことかわからない。
周りからは俺は病気を患った人間から被害を受けた可哀想な奴で……
俺が倫のことを探しても、周りは健気だとか、誑かされてしまってとか、そんな見当違いのことばかりを言ってきた。
倫が、どこにもいない。
倫は、この俺が作ったここで、俺と共に生きて行くはずだったのに。
俺は、いつか必ず倫を見つけて取り戻す。
そして今度こそ共に生きて行くんだ。
この、手作りの楽園で……
END.
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