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落ち穂拾い的な 行方不明者

「あ゛っあ゛ぁっ! 大神さんのオークおち〇ぽで種汁大量注入して孕……っんぎゃ」  無表情の大神に脇を掴まれてそのままベッドの上に放り出され、セキは悲鳴を上げて転がる。 「あ゛ーっ!なんでっなんでっ!ちゃんと入るように拡張も頑張ってるんだよ⁉入るっ!入るって!絶対入れるっ!ちゃんと鍛えたっ!オレの尻穴の努力を認めてよっっっ」 「やかましい」 「ちょっとだけっ!先端だけっ!さきっちょだけだからっ!」  寝巻のズボンをぐいぐいと引っ張られ、大神は面倒そうに振り返る。 「全然っ大丈夫っ!痛くないからっ!天井のシミ数えてる間に終わらすからぁぁぁぁぁぁっ!」  下着まで引っ張りそうな勢いに、大神はセキの手を払って歩き出す。 「おはようございます」 「ああ」 「朝から元気ですね」 「おちおち眠りもできない」  そう苦そうに言うものの、セキが共に寝るようになってから睡眠時間が格段に増えたのはいいことだと、直江は嬉しそうに笑う。 「瀬能先生がいらしています」 「わかった」  朝から瀬能が訪れてくる時は用事は一つしかない。  面倒だと顔に出るものの、定期的な検診は瀬能が大神に手を貸す際の条件の一つだった。  仕方ない態度を隠そうともせずに大神は準備を整えて客間へと向かう。   「  お待たせしました」 「ん?ああ、いいよいいよ」  親ほどの年齢の割には口調が砕けすぎていて、大神はいつもその違和感に顔をしかめそうになる。 「空き時間は授業に回せるから」 「…………」  瀬能の隣を見れば、もっと早く来いよとでも言いたげなしずるが大神を睨んでいた。 「じゃあいつものように問診票に記入して貰ってる間に、授業の話でもしようか。どこまでだったかな?」 「忘れました」 「じゃあ初めからね」 「嘘です、襲撃があったってとこです」 「あ、そう?まぁ、と言うわけでその年に起きた各国で同時に起きたオメガシェルター襲撃事件のせいで、世界的にオメガに非難が集中して、苦境に立たされるようになったわけだ」  瀬能から受け取った問診票に記入していた大神の手がわずかに止まる。 「なんで被害に遭ったオメガが悪くなってるんだよ」 「そうだねぇ、そもそもその時まで、オメガの存在を知らない人が多かったり、迷信と思ってたり、病気だと思っていた人が多かったって言う背景と共に、犯人グループやそれを指示した人間がそれなりに社会的に信頼のおける立場の人間だったからってのがあるよ」 「はぁ?」 「あんな高潔な人がそんな事件を起こすなんて、オメガは人を誑かせ、堕落させ、狂わせる病気なんじゃないかって話が流行してね。世間がそっちに乗っかっちゃったんだよね。信徒が多かったせいもあるんだろうけど」 「はぁぁぁぁ!?だ……だって、シェルターにいたのって保護されたオメガ達だろ!?そんな人たちを皆殺しにしといてなんで犯人が庇われてるんだよ!」 「皆殺しは言い過ぎかな。まぁ、その原因自体が常軌を逸したものだったから、それに整合性をつけようとした結果、オメガは人を誑かす魔性だって風潮が広まったんだよ」 「…………」  しずるは気持ち悪いものを見たような顔でむっと唇を捻じ曲げる。 「そこから『サラの子供』『サラの落とし子』なんて言う差別の意味合いを含んだ言葉が生まれたんだ」 「書き終わりました」  大神の静かな声に、瀬能はお?と表情を変えて向き直る。 「でも、生まれついてのことなのに病気とか言われて、昔のオメガはどうしてたんだろ?」 「そうだね、座敷牢とか、遊郭とかいろいろだね。あとは……行方不明かな。これは最近でも聞くけど」 「え……」 「いなくなるんだよ」 「それって、家出?」 「だといいけどねぇ。オメガに感染したからいなかったことに……とか、聞くからね」 「…………」 「オメガの行方不明者をずっと探してる人もいるよ」 「……ああ、時々貼り紙とか見かけるあれか」 「何年経っても、諦められないのは諦められないからね」  新しいものから、古いものまで……どれだけ探し続けているのかと考えると、しずるは自然と眉間に皺が寄せる。 「……俺も、雪虫がいなくなったらずっと探し続けると思う」  膝の上で拳を握り締めて、しずるはそうはっきりと言い放った。     END.   

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