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落ち穂拾い的な 仙内
橋を渡ろうとしてその不快感に眉をしかめた。
攻撃的な、フェロモンの臭いだと鼻をすんすんと鳴らしながら思う。
渡って渡れないこともないだろうが酷く不快で、このマーキングをしたαが一体なにを思ってこんなことをしたのかと溜息を吐く。
どうしたものかと思案していると、風の向きだろうか?ふわりと鼻先を甘ったるい匂いが掠めた。
「メープルか……」
昼を食べてなかったことを思い出し、仙内はその匂いに惹かれるようにふらふらと商店街と言うにはあまりにも小規模なそこへと足を向ける。
αとしての性なのか、いい香りがするとついふらふらとしてしまう自分に苦笑しながら、この匂いの元であるメープルメロンパンを買い求めた。
「さて、行くか」
目的はこの先の民家だったが、表向きの理由はその家を通った先にある神社と言うことになっている。
「ふぅん……嗚女河神社……」
は と笑いを漏らし、仙内は「おめが神社か」と言い直して橋を渡った。
神社まで案内し、帰って行く後姿を眺めながら、仙内は「あと一週間ほどだな」と小さく呟く。
まさかターゲットの方から近づいてくるなんて思わず、驚きもしたが好都合だった。
新名倫が初めての発情期に入るまでそれぐらいだ。
「予定通りだな」
甘ったるい香りをメロンパンの香りでごまかしながら、傍らを歩いていて気が付いた。
あの橋で香る酷く攻撃的な臭いが新名倫にこびりついていることに……
「……オメガを祀ってるってことは、そこの人間か?」
鼻の奥がムズムズするような感覚がして、仙内は顔を盛大にしかめた。
神主らしき人物はαだったが特にそんな雰囲気もなかったから、その血縁者があんなことをしたのだろうと当たりをつける。
言い訳に使った手前、何の興味もないがとりあえず神社で話を聞いてそれっぽさを装う。
これが酷く退屈で、欠伸を誤魔化すのに一苦労だった。
お守りを渡すと言う名目で近づいた際に感じた臭いを掌に再現してみる。
イメージとしては、香油を一滴一滴足していく感じだ。
「……いや、違うな。もう少し水辺っぽい感じだな」
臭いを思い出すために集中していると、どうしても自然と鼻がすんすんとなってしまう。
これが、臭いを取り込もうとするバース性独特の行動だと言われても、癖のようでどこか気恥ずかしい。
けれど、吸い込んだ鼻の奥で新名倫から漂ってきた臭いを感じて満足げに頷く。
「発情したオメガなんて、こんなニセモノにだって股を開くんだから」
一息吸い込んで、はは と笑う。
「運命なんて馬鹿らしい」
手を振って臭いを消すが、腹の底から湧き上がるような嘲笑はどうにも消すことができなかった。
END.
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