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落ち穂拾い的な 双子とフェロモンの出所

「うーん」  そう唸ると瀬能はいつもの癖で椅子の背に体重を預けてギシギシと鳴らした。  しずるは声をかけるべきか一瞬悩んだけれど、無視することにする。  話しかけてめんどくさくなかったことがない!とばかりに、瀬能の声を聞こえなかったものとして頼まれている資料の整理に戻った。 「ちょっとちょっと、冷たくないかい?」 「え、あ、すみません、作業に集中してて」 「棒読みだねぇ」 「気のせいじゃないです?」  話しかけられてはしかたがない とばかりに、しずるは「お茶淹れましょうか?」と問いかける。 「お願いしようかな。それにしても……うーん……」  繰り返される唸り声は、しずるに問いかけてもらいたがっているようだ。  それをあえて無視し続けることもできたけれど、しずるは自分の上司なのだと思い出してお茶を出すタイミングで「どうしたんですか?」と声をかけた。 「いや、ほら、みなわくんなんだけどさぁ」 「……」 「彼、鷲見家の人間でしょ?双子ばっかり産まれる」 「ああ、……そうらしいですね」  聞いた時は眉唾かと思いもしたことをしずるは思い出し、そう言う家系があるのかと顔をしかめる。  双子が生まれやすい環境や村があるのは話に聞いたことがあるけれど……と胡乱な視線を瀬能に向けると、苦笑を返された。 「そんな顔をされても、僕だってそう言う家系なんだってことしかわかんないよ。ガードが硬くて調べさせてくれないし。まぁでもわかる範囲で、件の鷲見の一族は見事に双子ばかりだねぇ」 「わからない範囲もあるんですか?」 「君だね」 「へ⁉」 「君がみなわくんの息子として、だとしたら君には双子の兄弟か姉妹がいて然るべきなんだ」  両親と血が繋がっていない と言う話ですら未だにうまく飲み込み切れていないと言うのに、更に血を分けた兄弟か姉妹がいると言われて……  しずるは不機嫌そうに鼻に皺を寄せて瀬能を睨みつける。 「オレに兄弟なんていませんよ」 「そりゃ君は   ……」  続けようとした言葉のデリカシーのなさにさすがの瀬能も口を噤んだ。    入れ替えられた子供なんだから の言葉をお互いに飲み込んで、気まずさをどうにかしようとしずるは違う話題を出す。 「そう言えば、オメガのフェロモンが項から一番出るって言うのは聞いたんですが、アルファのフェロモンはどこから  」 「股間」 「  」 「股間」 「  」 「こ  」 「ああ、はい」 「ってことはオメガに股間を噛まれたら他のオメガの匂いを感じなくなったりするのかな、と思ってみたりみなかったりしてるんだけど」 「実験しないでくださいよ」 「そんな非人道的な  ねぇ?」 「こっち見ないでくださいよ!第一性交中に股間噛むなんて無理です!」 「……それもそうだねぇ。しょうがない、じゃあ抜歯だけでいいよ」 「よくないですよっ!」  いつか本気でやりかねない と、しずるは口を押さえてそう怒鳴り返した。   END.

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