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落ち穂拾い的な 親ばか

 田茂シゲルがΩだと言うことは出会った瞬間に分かった。  ちっこいのにイキがっていたけれど、こっちに漂ってくる匂いは間違いなくメスのそれだ。  とは言え、別に手を出すとかそう言うことを考えていたわけじゃなく、金を借りていった客の息子だってくらいの認識だった。  Ωだから、いざとなったらそっち系に沈めてしまえば金の回収もできるし、ラッキー くらいだ。  きゃんきゃん噛みついてくる割には懐っこくって、警戒心がほぼゼロ。  ちょっとポケットに残ってた溶けかけたチョコレートをやれば、すっかり信用したようににこにことしてくる。  危なっかしい、奴だ。  まぁ今のところ、母親は滞ることなく金を返しているし、特に関わり合いになることはないように思っていた。  ……シゲルの母親が失踪するまでは。  不良ぶってはいたが、傍から見ればシゲルはずいぶんと献身的に母親を支えていたと思う、だから、連れていくなら働き手に十分なり得るシゲルも一緒に連れていくんだと思っていた。  部下から報告を受けて訪れてみれば、死にそうな顔のシゲルがぼんやりと部屋の真ん中で座っていて……  このまま放りだしてはダメだって、直感が頭の中で怒鳴っていた。 「おかえりー……」  出迎えの言葉に、両手に持っていた食料を下ろした。  今日も学校を休んだのか、本来ならばいないはずの時間にアパートにいる姿に思わずため息を吐く。  シゲルは俺が引き取って以降、妙に情緒不安定な時があって、何日も引きこもることがあった。  その度に励ましたり、うまいもん食わしたり、話を聞いたりしてはいたが、原因はさっぱりだった。 「学校は行っとけ」 「調子悪かったからしょうがないだろ」  発情期か?と鼻を鳴らすように匂いを嗅いでみるが、何も感じられない。  いや、シゲルがむらむらしてるなって匂いはするがそれくらいだ。  発情期のような暴力的な香りはしない。  なのにシゲルの目はとろんとしていて、息は荒いし顔は紅潮している。 「……ヒートか?」 「違うもん。なんか……ずっとお腹がじれてて……それだけだし」  いつもなら元気に返ってくる返事もいつもと違って不機嫌だ。 「……あきぃ」 「どう   っ」  飛びついてきたシゲルの目的は単純明快だった。  俺が止める間もなく唇に食らいついてきて、へったくそで可愛いキスを繰り出してくる。 「う゛っ  な、なに  」 「あきっあきっ!」  性急な手つきで、そんなことをしたことがないってわかるたどたどしさで服を引っぺがされて……  鼻先をくすぐる甘い匂いと、本人の渾身を込めた誘惑に抗えるほど俺はシゲルに対して興味がないわけじゃなかった。  もつれあうようにしてせっまいリビングの床に転がりながら、ガキみたいに性急なセックスをして、組み敷いたシゲルを自分のΩにするんだって決めたのはその時だった。  まぁこうなってもまんざらじゃねぇなって思っていただけに、意識を飛ばしたシゲルがうなされ始めるまでは幸せの絶頂だった。  「────やぁ!  やめ、せ、ぱ、  それだけ、はっナカはっ  いやだ!押さえつけないで!いやだ!やめて!か……嚙まないで……それだけは……」  その言葉の内容がなんであるかわからないほど、初心じゃなかった。      後で主治医に聞くと、男型Ωの妊娠初期にはよくある症状で、大きくなる子供が前立腺を圧迫して性欲が増すのだと言う。  それがなければシゲルと関係を持てなかっただろうし、シゲルの身に起きたことにも気づかなかったかもしれないと思うと、タマコは幸運を運んで来てくれる子供なのかもしれない。  さすが、俺の子供だ。 END.  

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