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赫砂の失楽園 91

「アルノリト、少しここは暑い」  そう言って見上げてやると、柔らかで大切なものを見つめているのだとわかる視線が全身に降りかかる。  この男の愛が、全身に注がれているのだと心が理解した。 「少し、中に入りたい」  ぎゅうと抱き着けば、アルノリトは驚いた表情をしながらも嬉しそうに微笑んでオレを姫抱きにして部屋へと急ぐように入って行く。 「そうだな、暑かっただろう。今冷たいものを持ってこさせる」 「ん  」  柔らかなソファーに下ろされてもアルノリトの服の裾を握り続けたオレに、やっぱり驚いた顔をして……でも嬉しそうにぱぁっと満面の笑みを広げた。   「カワイイ、ハジメ。鳥のヒナのようだ」  隣に座ったアルノリトの胸に体重を預けると、熱い腕が伸びてふわりとオレを囲った。  抱きしめるほどきつくはない、けれど二人の間に隙間ができるのを許す様子ではない。  次々と果物や飲み物、口当たりのよさそうな菓子が運ばれてきて、目の前は極彩色の宝石が並んでいるかのようだ。  どこもかしこも美しいここが、天国だと言われたなら納得ができる。 「喉も乾いたろう?」  甲斐甲斐しく果実水がいいのか酒がいいのかと尋ねてくるアルノリトの言葉に首を振り、体を密着させたままアルノリトの膝の上にすり寄った。  薄い生地なせいでオレの内太ももにはアルノリトの熱がはっきりと伝わってくる。  テラスで感じた熱よりも熱くて、焼け焦げそうだと思うそれはオレの身の内をじりじりと焼いていく。 「じゃあ、飲みたい」  耳元ではっきり告げると、今までの余裕を手放しそうな雰囲気でアルノリトはもう一度何を飲みたいかを尋ねてくる。 「飲みたい」  す と手を滑らしてやればオレの言葉の意図がわかったのか、飲み物の名前を上げていた口が真一文字に引かれてしまった。  動かないそれにねだるように口づけて、下腹部に伸ばした手をするすると撫でるように動かす。  さらりとした生地の上からわかる熱くて重量のある存在。  ほんの少し前にも出したと言うのに、そんなことを感じさせないくらいの力強さを感じる。  カリカリと焦らすように爪の先で軽く引っかいてやれば、真っ直ぐな唇にはますます力が籠って……官能的な厚い唇が薄く見えるほどだった。 「喉、乾いた。な?オレの欲しいものわかるだろ?」 「わた わたし、は ハジメをくど  っ」  伸びあがってちゅうっと口づけてやれば、凛々しい眉がぎゅっと寄って深く皺を刻む。  けれどそれは決して嫌悪の気配を含んではいなくて、自分自身の中の何かと戦っているかのようだった。  

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