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第1話

「あつい、暑い……あち――い!!」  開け放たれた窓からは、蒸し風呂のような熱気と湿気をはらんだ風が申し訳なさげに入り込んでくる。  広げた参考書もいっこうに頭の中に入らない。  暑さのせいもあるが、司法試験の結果が九月にでるまで気分が落ち着かない。 ――四畳半一間、共同トイレ、クーラーもない擦り切れた畳の部屋で、法曹界を夢見た若者の孤独死  小さな三面記事を想像して、義人(よしと)は身震いした。  学生時代は仕送りでなんとかしのいできた。  そのわずかな仕送りも五月の司法試験終了と同時に打ち切られ、いまはバイトをしながら食いつないでいる。  今年合格できなければ、バイトしながらの受験勉強になる。それでは、ますます弁護士への夢が遠のくばかりだ。  ここはどうしても一発合格を願うしかない。  願いながらも、落ちた時を考えると受験勉強をやめられないでいる。

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