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第2話

 ぐぐぐ――っ!  突然大きな音を立てて腹が鳴った。 「今日は焼き魚か」  夜の八時頃には、決まっておいしそうな香りが隣の部屋から漂ってくる。  しかも今日は魚の炭火焼、なんとも誘われる匂いだ。  焦げ目から油が滴り落ち、ジューゥッと音を立てて煙をあげる。  そんな光景を思い浮かべ、思わずよだれをすすった。 (今頃あいつは、窓に腰を下ろしキンキンに冷えたビールを片手に……) 「うううううっ……待った!」  耐えきれなくなって、隣の窓に揺れた影に向かって大声を上げた。  床を踏み鳴らしまっしぐらに隣へ駆けつけ、悩むことなくドアに手をかける。  鍵が掛かっていないのは、こうして耐えきれなくなった義人が来ると相手は信じて疑わないからだ。  なんだか餌付けされた猫になった気がして情けない。

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