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第3話
立て付けの悪い扉がきしむ音がして開くと、ささくれだった畳の部屋に見事なまでに不釣合いな男がいた。
文句の付けようがないバランスのとれた体型。
育ちの良さが現れた穏やかな顔立ち。
男は長い足を組んで開いた窓に腰掛けている。
塗装のはげかかった手すりのついた窓枠さえも、豪華な額縁に変えてしまう。
男の存在感は、本来ならば不釣り合いであるはずの部屋までもねじ伏せて自分の世界へ取り込んでしまう力を持っていた。
「三分三十四秒」
男が微笑んだ。
大学在学中に旧司法試験に合格した優れた頭脳の持ち主、本宮信司 。
すでに父親の弁護士事務所で弁護士として働いている。
「昨日より四十一分五十秒縮んだ」
「当たり前だろ。流しそうめんなんて匂わねえし」
昨日はいつまで経ってもしてこない料理の香りに業を煮やし、義人は押しかけたのだった。
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