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第13話 秋良side居なくなった雪
「居ない⁉︎ゆきちゃんが居ないってどうゆう事⁉︎」
椿の悲鳴の様な叫び声を、聖は後ろから口を塞いで止めた。俺は椿と聖に見えるように雪の残したメモをカフェのテーブルに放った。
そこには雪の綺麗な文字で『発情期は寮の外で済ませてきます。前から知人に頼んでたので、心配しないでください。雪弥』そんな風に書いてあった。
聖はメモを睨みながら唸った。
「雪は、元から俺たちに頼まないつもりだったんだな。くそっ。誰だよ、知人て。あーだめだ、雪の交友関係、全然わかんねぇ。あいつ秘密主義だからな…。」
椿は悲しそうな顔をして、メモを指で挟むと雪の綺麗な文字をなぞりながら言った。
「ゆきちゃんはさ、発情期凄い嫌がってたじゃん?だからきっと、俺たちにそんな姿見られるのは耐えられなかったんじゃない?俺はゆきちゃんの発情期、一緒に過ごしたかったけどね…。」
俺は捕まえようとすると、一瞬ですり抜けていく雪の存在に、少し笑えてきた。
「そーだな。多分俺たちが必死に成ればなるほど、あいつは逃げていくんだ。俺たちは黙って手の中に入ってくるのを待つしかないのかもしれないな…。」
椿は俺をジロっと睨みつけながら言った。
「秋良は良いよ。クラスも一緒でさ、昨日だっていきなりキスぶちかましてたじゃん。あれ、マジでヤバかったでしょ。狡い~!」
聖も俺を睨んで言った。
「ほんとソレ。美味しいとこもってくよ、お前は。…確かにあの時やばかったよな。お前にキスされたら、雪からこうブワっとフェロモンが出てさ。俺ダイレクトに股間にきたんだけど。部屋に送った時、目の前の色っぽい雪を襲わないように、必死で押さえてたんだぜ。あー、ヤバかった。」
そして俺たちはもう一度メモを睨んで吠えるしかなかったんだ。
「「「知人て誰だよー!」」」
俺たちは雪が発情期を迎える相手に選んだ知人の正体が、まさかの相手だなんてこの時には一瞬でも考えなかったし、しかもその相手から連絡が来るとかもその時、全然予想できなかった。
しかも雪が、ほんとにヤバい奴だったって、俺たちの想像を超える奴だったって知ることも予想出来なかった。雪の発情期以降、俺たちは完全に呑気な高校生から、特別な高校生に変わらざるを得なくなった。でもそれは俺たちの選択だから良いんだ。
只々、その時は俺たちの未来がそんな事になるとか想像しなかったって事だよ。
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