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第22話 飲みたければ

俺は先輩の話を聞いて、ぎょっとしてしまった。 俺はなぜ性的な話から逃げていたんだろう。当然知っていなくてはいけなかった知識が俺には全くない。発情期に精液によって、発情間隔が空くだとかどんな仕組みなんだ…。俺の身体どうなってる。俺は酷く動揺していたに違いない。 そんな俺を祥一朗先輩は優しく撫でながら、言った。 「クク、雪弥はこの手の話に全く免疫がないと見える。どれだけ純粋培養したら、そうなるのか不思議な感じだ。さぁ、クリームは塗り終わったから、何か飲むかい?」 そう言ってドリンクを取りに行く、先輩の均整の取れた美しくも逞しい後ろ姿を見つめていた。俺は親でさえ踏み込めない非常にプライベートな関係になってしまった人を、他人行儀に呼び掛けるのもどうかと思って、そっと呼んでみた。 「....祥一郎さん。」 先輩はなぜか、真っ直ぐに俺のところまで戻ってくると言った。 「今、私を呼んだか?」 俺は名前を呼んだのが聞こえてしまったのかと、急に恥ずかしくなって首を振った。するとベッドに腰掛けた先輩は、俺にドリンクを見せると言った。 「雪弥が私の名前を呼ぶまで、これはお預けだ。」 俺は凄く大人びて見えていた先輩が、子供っぽいことを言ったので可笑しくなった。 「ふふふ。…祥一朗さん。…?ダメ?…祥一朗?」 結局先輩が満足する呼び方まで、俺は飲み物がお預けになった。先輩は俺が呼び捨てると、満足そうに微笑んでドリンクを自分で煽って、俺に口づけながら飲ませた。 結局口移しかよと心の中で揶揄っていたけれど、冷たいドリンクがもっと欲しくて舌を伸ばした。触れた先輩の舌の冷たさが心地よくて、何度も強請って飲ませてもらったんだ。 何度目かの給水に俺は満足したものの、覚えのある焦燥感がじわじわと身体の中心から湧き出てきた。俺は絡めていた舌を甘えるように吸って、重たくなった瞼を少し開けた。先輩が釣られるように開けた眼差しは既に熱くなっていて、俺を支える腕の力はより強く感じた。 「せ…、祥一朗、俺…。」 それから俺たちは馴染みのある身体の高まりと、終わらない焦燥感の餌食になって身体を繋げた。さっきよりも深い繋がりは俺の身体を更に熱くさせて、大きく揺さぶられるその動きに、頭の中までクラクラとしていた。俺はまさに食いちぎる勢いで祥一朗を貪り尽くしたんだ。

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