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第24話 祥一朗side自分の限界

雪弥は人の心を喰らうんだと意味不明なことを言って、私の目をじっと見つめた。私は雪弥の金属の様な深みのあるグレーの瞳の中心に何かキラキラと光るものを感じた。それから一瞬気が遠くなった気がしたけれど、それだけだった。 「…雪弥、一体…。」 雪弥は妖艶に微笑むと、私に口づけて言った。 「さぁ、俺の祥一朗。俺を楽しませて。…愛して。」 私は雪弥の囁きが身体の奥深くに響いてくる様な、不思議な心持ちになって、雪弥のしなやかな身体を抱きしめるとその甘い唇に吸い付いた。 それは私の限界だった。流石の私も、雪弥に精力を搾り取られて、フラついていた。もう限界だと知っていながらも、他の人間に雪弥の発情期をおさめてもらう必要があるのかと、残念な気持ちで隣に眠る雪弥を見つめた。 既に時間の感覚はなく、時計もデジタル表示でなければ朝方なのか、夕方なのか、判断に困ったろう。昨日の夕陽に照らされた神々しいまでの雪弥を思い出して、私は今も目の前の銀色の髪に変化した美しい煌めきを手の中にひとすくいして眺めた。 発情期に髪色が変化するなんて聞いたことがなかった。それとも私が知らないだけなんだろうか。私は身体を起こすと、気力を振り絞って立ち上がると鍵を開けて、寝室を出た。冷蔵庫には身内が届けてくれた雑多な食事が詰まっていた。私はそれらを適当にトレーに載せると、ドリンクのボトルを2、3本手に取って、ソファまで運んだ。 雪弥との交わりで散らかっていたはずのソファも、すっかり綺麗になっていて、私は身内の顔を思い出して少し気恥ずかしい気分になった。まぁ実際には連れてきた使用人にやらせたのだろうが。 私はカウンターに置き去りのスマホを持ちあげると、その身内に電話を掛けた。 「…ああ。私だ…。…どうかな。もし必要なら秋良達を呼ぶかもしれない。…フフ。流石にね。そう、それより聞いてくれ。発情期で髪色が変化するなんて事聞いたことがあるか?相手の髪色がかわったんだ。ちょっと聞いたことがないし、初めてのケースなので…。…銀色だ。ああ。頼めるか。詳しくわかったら直ぐに連絡を。…ああ、頼む。悪いな。」 私はスマホを置くと、ドリンクを一気に飲み干した。思いの外喉が渇いていた。前回、飲んだり食べたりしたのはいつだったか思い出そうとしても、疲れ切った頭は動かない。 私は糖分の多そうなフルーツタルトを手に取ると、口に放り込んだ。ジューシーなラズベリーの甘酸っぱい味が、口いっぱいに広がった。私はこの味を口にする度に、雪弥との目眩く発情期を思い出すかもしれないと思った。

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