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第25話 俺の通常モード覚醒せよ
発情期というのは結局のところ、俺にとってはターニングポイントだったのは間違いないと思う。
でもその時はただひたすら身体の欲求のまま、俺は祥一朗を貪っていた。俺たちは疲れ切って死んだ様に眠るか、いつ祥一朗が注文しているのかわからなかったが、おざなりに食べ物を食べ、二人でじゃれ合うように入浴し、少し話して、そしてまた身体を繋げ合う、その繰り返しだった。
俺はなぜかその時、時間の経過を気にする事もなかったし、俺を心配していただろうアイツらの事も頭からすっかり抜け落ちていた。目の前の自分の欲望が俺を支配していた。俺は、はたから見るとまさに昔の姉の様な状態だったんだろう。
カーテンから漏れる光が明るかったのは覚えているけれど、ある時深い眠りから目覚めた俺は何かいつもと違う気がした。視界が明るい…。俺の視界に映る自分の髪がキラキラと銀色に輝いていた。祥一朗が何かしたんだろうか?
俺は側で眠っているはずの祥一朗を探したけれど、そこには誰か居た形跡はあるものの、姿は見えなかった。
俺は軋む身体を持ち上げて、呻きながら立ち上がるとヨロヨロしながら、寝室を出た。寝室につながる広いリビングは昼の明るい日差しが差し込んでいて、気持ちの良い空間になっていた。
ソファでは、祥一朗が腰タオルで、眼鏡をかけてモバイルで何か作業しているようだった。祥一朗は俺がそこにつっ立っているのに気づくと優しく微笑んで、立ち上がった。
「雪弥、目が覚めたのか。調子はどうだ?…雪弥がここに来て、今夜になれば丸5日経つことになるが…。」
祥一朗は眼鏡を外しながら、俺の様子を観察するように見つめた。俺は自分の中のあのじれつく感じがスッカリ無くなっている事に気づいた。自分で身体の表面を撫でたけれど、特にピリついたり、ため息が出る感じでも無かった。
「…うん。大丈夫。もしかして、発情期終わったかも…?」
俺がそう言うと、祥一朗は俺の側に来てそっと抱きしめた。俺は多分発情期の終了と共に全てリセットされたんだろう。恥ずかしさと、居た堪れなさにジタバタと身動きした。
しかも今気づいたが、俺マッパだ。朧げに、口にするのも恐ろしいアレコレを散々祥一朗とやり尽くした俺様だけど、今はそう、いわゆる素面なんだ。しかも起き抜けであそこまで兆していて、居た堪れなさが2倍だ。俺は祥一朗を見上げて囁いた。
「俺、シャワー浴びてくる…。離して。」
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