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第30話 俺の誤魔化しアイテム

結局、話は呼び出したメンバーが揃ってからということになって、俺はクリーニングされた自分の服に着替えた。結局、ここに来てから、服を着たのは初めてだった事に気づいて、俺はどんだけ爛れた状況なんだと頭を抱えた。 目の前でモバイルを操って作業している祥一朗を見つめながら、そういえば俺の眼鏡はどこに行ったのかと周囲を見回した。リビングの小物置き場に置いてあった俺の眼鏡をかけるともなしに指先でいじっていると、祥一朗がこちらを見つめていた。 「雪弥、本当は眼鏡は必要ないんだろ?なぜ掛けていたんだ?」 俺はフレームのない慣れ親しんだ薄いレンズをシャツの裾で拭きながら言った。 「…俺、昔からこの顔があまり好きじゃなくて。何か弱そうでしょ。小さい頃は女によく間違われたし。姉貴と歩いてると大概姉妹って言われて。姉貴も背が高いから尚更なんです。だから、そうだな、周囲が発情期迎える様になって、俺のことを変な目つきで見始めたのが分かって、耐えられなくて。 それで髪も長くして眼鏡掛けて、あんまり顔は晒さない様にしたんです。ちょっとはマシになったから、効果はあった気がするけど。でもこんな髪色になっちゃうと返って長髪だと目立ちますよね。いっそバッサリ坊主?ハハ。」 俺の自虐的笑いに、祥一朗は優しい顔で言った。 「そうか。苦労したんだな。まぁ、でも坊主はおすすめしないぞ。美坊主になって、かえって話題沸騰、間違いなしだからな。…それに雪弥は自分じゃ気づいてないかもしれないが、発情期が終わったせいか、オーラが桁違いにアップしてる。フェロモンも感じるし、付け焼き刃で誤魔化せる様な状況ではないな。 秋良たちを呼んだのも、そこら辺の対処を協力してもらう必要があるからだ。」 俺は自分では全く分からなかったけれど、昔秋良たちが発情期終えた後に凄まじい勢いでモテ期が来たのを思い出した。発情期が来てなかった俺にはわからなかったけれど、それがオーラが違うとか、フェロモンとかの事だったんだろうか。俺がそんな事をあれこれ考えている間に時間が経ったのか、インターホンが鳴った。 俺はため息をついて伊達メガネをテーブルに置くと、誰が到着したのか少し緊張しながら、迎えに出た祥一朗が戻ってくるのを待った。祥一朗の後ろから来たのは、どこか祥一朗に雰囲気の似た少しチャラい感じの男だった。祥一朗が言った、フォローしてくれている従兄弟、多分その人なんだろう。 俺はソファから立ち上がって、その人が部屋に入ってくるのを見つめた。

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