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第31話 楓side祥一朗の頼み事
従兄弟の中でも気の合う祥一朗から頼みがあると呼び出されたのは、祥一朗が籠る1週間前のことだった。
祥一朗は鱗川コーポレーションの次期社長と目されている前途有望な大学生だ。俺より5歳は下なのに、年齢差はほとんど感じないくらい、昔から大人びた男だった。気怠く自由に生きてる弟とは反対に、嫌味なくらい優秀で、周囲からの期待も大きかった。
俺はそんな祥一朗が少しだけ心配で、昔から悪いことは俺から教えてやるという風に、兄貴ヅラしていたんだ。祥一朗も俺の前では優等生の仮面を脱ぎ捨てて、年齢相応な素顔を見せる事も多くなって、俺はいい気分だった。そうは言っても俺も大学を卒業すると、親父の会社の手伝いに忙しくなって、なかなか前ほど会う機会が取れなかった。
結局、祥一朗も高校時代から始めていた鱗川コーポレーションの新規事業の思案を、卒業後にそのまま実務にしたせいで、益々忙しい大学生となった。たまに会う祥一朗は以前よりも感情を見せない事が上手くなっていて、俺はまた心配事を増やしたんだ。
そんな祥一朗に頼み事をされて、珍しい事もあるもんだと、嬉しさと、半分好奇心で会うのが楽しみだった。自分のマンションで俺の好きなウォッカを用意して待っていた祥一朗は何だか落ち着かない様子で、俺はますます何の頼み事なのかとワクワクしてしまった。
「…ちょっと他に、こんな事頼める相手が思い浮かばなくて。秋良には今回頼めないし。」
俺がウォッカを三杯煽る間に言いづらそうにしていた祥一朗はそんな事を言った。俺は直ぐにピンと来た。
「あ、そうゆう事か。恋愛関係か?」
そう言って揶揄いモード全開の俺に、少し嫌そうな顔をした祥一朗は、俺の想像を超えた話をし始めた。俺は祥一朗の話を聞き終わると、内心の動揺を押し殺して精一杯のポーカーフェイスで言った。
「…つまり、秋良の友人の希少種系の、高2ではじめての発情期の相手になってここに籠る可能性があるから、その間のフォローをして欲しいってそうゆう事か?」
祥一朗は頷くと、俺の顔をじっと見つめた。俺は突撃レポーターってこんな気分かなと、変な事を思い浮かべながら言った。
「ひとつ聞いていいか?俺、高2で発情期来てないなんて話、まず聞いたことがないんだけど。それ、本当なのか?祥一朗の気を引きたくて嘘ついてるんじゃなくて?ていうか、秋良が相手するんじゃダメなの?いつも側にいるんだろう?」
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