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第32話 楓side祥一朗の恋バナ
俺がその発情期の相手について突っ込むと、祥一朗は目を逸らして言った。
「楓は、雪弥を知らないから…。ここだけの話だけど、雪弥はちょっと人と違うんだ。なんて言うか人と違う価値観で生きてるっていうか。発情期もトラウマになってて、薬で押さえてるのがもう限界らしい。秋良たちに発情期の姿を見せたくないって、私にその時は頼むって言われてる。…私も雪弥を手に入れたい。」
そう淡々と話す祥一朗は、正直目を逸らしたくなるほど真っ直ぐに、雪弥という後輩に惹かれているただの大学生だった。俺はすっかり楽しくなって言った。
「オーケー、オーケー。祥一朗の初恋を実らせるためにひと肌脱いじゃおうかな?」
少し顔を赤らめた祥一朗の年相応の恋バナ?に俺はいい気分でフォローを約束した。それから1週間も経たないうちに、その約束は果たされることになった。預かっていた鍵でメンテナンス要員と入ったマンションは、いつものモデルルームの様な感じとは全く違って乱れた感じで、祥一朗の生々しい状況が出ていて俺はニヤニヤが止まらなかった。
漂う祥一朗とは違う甘いフェロモンの匂いは、確かにダイレクトに股間を直撃して、俺が雪弥という相手に興味を覚えたのもしょうがないだろう。
帰宅して学園、雪弥、で簡単に検索したけれど、ほとんど情報が出てこなかった。俺の家の会社は言うなれば情報屋だから、俺は会社用のPCで本気になって検索した。それでも出てきたのは表面的な僅かだった。こんなに情報が無いのはある意味怪しい。意図的に隠されているとしか思えなかったが、本人は普通の魅力的な?高校生だ。だとすると誰か近い関係者が情報を隠蔽しているのだろうか。
俺は祥一朗の相手というだけではなくて、情報屋として妙に好奇心をくすぐられた。
祥一朗から受けた次の電話は、俺を驚かせると同時に、俺の力量を試される様な内容だった。何でも雪弥の髪色が銀色に変化したのだと言う。発情期で髪色が変わるというのは聞いたことがない。が、銀色の髪。それに俺は引っ掛かった。このザワザワとする感じ。大きな獲物が目の前にいる感じは、俺の本能と直結してるんだろうか?
そして俺は情報の海を深く潜って引き当てた。それはとんでもない黄金の宝箱を真っ暗な洞窟で見つけた、そんな興奮を俺にもたらした。黒崎雪弥、何という秘密なんだろうか。
俺は黒崎雪弥が祥一朗の手の中から逃げ出す前に、俺の手の届くうちにそれを掴むために、心臓を波立たせながら祥一朗へ電話を掛けた。
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