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第45話 俺の扱い
「とりあえず、ざっくりと話はした。細かい話はとにかく、今考えなくてはいけないのは、雪弥のその髪だ。」
楓さんの話に、珍しく真面目な顔をした椿が身を乗り出して言った。
「俺、絶対に染めた方が良いと思うよ。全部黒にする必要は無いけど、前と同じようにメッシュの様に。でも染めるとなると、他人に銀髪バレるよね。あ、別に地毛が銀髪だってバレなきゃ良いのかな。とにかく、マウンテングループに関わりがあるって分かったら、有象無象の横槍が入るのは間違いないからね!下手すると誘拐もあるよ⁉︎」
祥一朗は難しい顔をしていたけれど、俺の頭を撫でると言った。
「ああ、確かにそうだ。しかも雪弥が発情期が終わったことは目に見えて明らかだからな。注目されるのは間違いない。そこで更に新しい関心を引くのはリスク管理的にはタブーだ。」
今まで黙って話を聞いていた聖が言った。
「俺、格闘のツテでプロデュース系得意な奴知ってるけど。試合の時に派手にしたりするのが上手い奴。多分髪とか上手くやってくれるし、まぁ、雪見たら他言無用で張り切ってやってくれると思うし、信用できる奴だ。」
楓さんは、頭の中で色々考えを巡らせている様だったけれど、ひとつ頷くと言った。
「じゃあ、その線で行こう。聖くんが人となりを良く知ってるなら大丈夫でしょ。連絡取れそう?」
聖は連絡してくると廊下に出ていった。俺は楓さんを見つめて言った。
「結局、俺と父親は接点も無いし、これから特に何か問題になるとは思えないんですけど。俺も普通の高校生ですしね、ふふ。」
楓さんは僕をじっと見つめると、深いため息をついて言った。
「そうだな。一回、お母さんとは話をした方が良いと思うぞ。とりあえず、髪色を戻して前の生活に戻れるかやってみるしかないな。」
俺は楓さんが、なぜ俺が前の生活に戻れないような言い方をするのか気になったけれど、聖に話しかけられて、その事は直ぐに忘れてしまった。
「雪、明日の朝の開店前なら髪やってくれるってさ。…その髪じゃ今日も寮に帰れないな。」
俺は聖にお礼を言うと、みんなの顔を見て頭を下げた。
「何か俺のために色々考えてくれてありがとう。祥一朗と楓さんには本当にお世話になってしまって。お前たちにも凄い心配かけて、俺は自分のことしか考えてなかった事が良くわかった。ごめん。」
ほのぼのした空気が漂ったと思った瞬間、その空気を切り裂く男がいた。
「俺、今日ここに泊まるから。」
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