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番外 夏!夏!汗だくで!*リバ

「なぁ!!えっちしようぜ!」  唐突に何を言い出すかと思えば子供のようにキラキラした目でセックスをしようと言ってきた。確かに明日は休みだと言ったがそんなに急に言われても心の準備もできていなければムードも何もない。 「突然過ぎませんか…」 「言わないで溜めるよりいいじゃねーかよ~」 「そうかもしれませんが…」  だからと言って…その、もう少し何かなかったのかと。流石にフランクに誘われすぎてムラっとも来ないし、呆れかえるばかりである。それに私にはもう一つ問題があった。 「今節電中でクーラーつけないって約束じゃないですか」 「そーだけど…」  少し出費が続き、家計が苦しくなってきたためしばらく扇風機だけでやりくりしようと少し前に約束したばかりだ。ただでさえ熱中症で倒れることさえある私がこの灼熱の部屋でセックスなんてしようものなら逆上せて倒れるだろう。 「どうしてもムラムラしているなら口でしてあげますから」 「やだ!!!抜いてほしいんじゃなくてえっちしてーの!!」  ガルはどうしても引かない構えのようだった。もう今にも噛みついてきそうな勢いで迫ってくる彼にどうしようもなく押されるしかなかった。 「ね、熱烈なのは嬉しいですが…どうしてそんな…」 「何週間ほっといたと思ってんだよ~。忙しいって理由でシてねーじゃん!」  確かに前回いつ彼を抱いたか思い出せない。ただ言い訳にして逃げていたわけではないし抱きたくないわけでもない。仕方がないですねと言おうと思ったとき言葉は彼の声でかき消された。 「あ!じゃあ俺が抱く!!」 「は?」  私は理解が遅れて固まってしまった。ガルが??私を???いや確かに男同士なのだから逆になったとして同じことはできる。そして私はそちらの経験もあるリバだ。できないとは決して言えないがガルとはタチネコが変わらないと勝手に思っていた。 「暑くてクタクタになっちまうなら俺がお前を抱けばいいじゃん!」 「いや、私がネコでも暑いのには変わりがないでしょう!!」 「え~、お前でソッチもするんだろ~?」  全く話を聞いていないようだ。私は日ごろ仕事を確実に取ってくるために接待している。接待の内容は様々ではあるもののほとんどは体を差し出すものだ。もちろん相手を抱くこともあれば抱かれることもある。 「し、しますけど!それとこれとは…!!」 「関係ない、だろ?」  力が劣るため彼に押し倒されては抵抗もできない。ぐっと力を込めて反抗しようとしたがその抵抗虚しくベッドへまっすぐ押し倒された。身をよじっても全く抜け出すことができなかった。 「まって…!ガル!心の準備が…!」  誰かを抱く心構えと抱かれる心構えは違うのだ。快楽を目的としないならすっと差し出せる体も今からメスにされると思うと覚悟なんて決まるわけがない。私は好きな相手に抱かれるのはきっと初めてだからだ。 「今からしてくれ~」 「そんな無茶な…!」  ガルはいつも逃げようと思えば逃げられる私の腕の中で素直に抱かれてくれていただけで、抱かれることだけが彼の幸せではないのだと思い知らされる。それはそうだ、彼も男なのだから好きな人を抱きたいという欲求があってもおかしくはない。 「できるだけ優しくするから…な?」 「………、はぁ…………、今回だけですよ?」  仕方なく体の力を抜いた。本当はあまりやりたくない。というのも私がそちらだととても弱いということを知られたくないからだ。これ以降私がずっとネコにされるのは正直嫌だ。その懸念もあっていつもタチを譲らなかったのだが、もう負けを認めるしかない。だってこんなに………ガルが男らしく私を、押し倒している。 「お前が可愛い顔するの、見たかったんだよな」 「っ………」  こういうときだけ雄の顔をするのをやめてほしい。心臓がいくつあっても足りない。 「痛かったり、嫌だったら言えよ?男抱くのは初めてだから」  ガルは時折デリヘルもやっている。女性相手専用のデリヘルなので確かに男性経験はなさそうだ。しかしガルにされて嫌なことなんて…………ある訳ないじゃないか。 「言いません…」 「なんでだよ、痛いときは言えって」 「途中でやめられる方が嫌ですから…」  中途半端に中断されるとじれったくてたまらないのでいつもこういっている。それが歯がゆい程度ならまだいいのだが私は欲深いので苦痛に感じることもある。 「じゃあ…やめねぇけど、一応言え。角度変えるとか…なんかできると思うから」 「…わかりました」  気遣いのできる男はモテるだろうに、私が貰ってしまったので他の誰にも渡らない。誇らしくもあるが申し訳なさも少しあって複雑だ。 「ローション、持ってるんだろ?いっこちょーだい」  いつものように胸ポケットからローションの小袋を一つとると、ガルは封を切って手になじませた。直接垂らしたりしないところも女性にいつも配慮しているのだろうな、と思わせるそぶりである。デリヘルをやっていることに嫉妬はしないが慣れている手つきを見ると私でいいのだろうかと自信を無くしかける。 「んな顔すんなよ。慣れてんのはお互い様だろ?」 「だ、だから何も言ってないんでしょう?顔に出ちゃったことは謝ります…」 「謝んな。こんなご時世でもなきゃしてほしくない仕事なのは分かってる」  こんな荒れた日本じゃなければ、恋人に体を売ることを求めたりしない。その仕事を容認し、見送ったりしない。 「ガル…、そんなことどうでもいいって思えるくらい悦くしてもらえませんか?」 「当たり前だ、客相手にも今までの恋人にもしたことないような気持ちイイことしてやるよ」  私の体はすっかりその気になって色っぽく彼を誘っている。ネコのスイッチが入ってしまえば私はまさに女のように男を誘うことばかり考えてしまうのだ。どんなふうに強請れば男が悦ぶのかおそらくは知っている。彼には通用しないだろうけれど。 「っあ…、抱かれるのは久しぶり…、だから体が欲しがっちゃって…」 「可愛いな、うぉんのそういう一面、知れてよかった」  ローションでぬるぬるになった指をゆっくり押し入れられるとそれだけで体が跳ねた。だがそれだけで満足するわけもなく私の体は貪欲に快楽を貪ろうと腰を揺らしている。 「こ、こんなの、知ってどうするんですかっ…!」 「俺だけの秘密にする。彼氏に可愛いとこって」 「っ…!」  そんなこと言われたらもっと貪欲になるじゃないか。もっともっと見せてあげたくなる。この淫乱で貪欲で浅ましい姿を見せつけてやりたくなる。私のMな気質が表に出始めていた。 「慣れててすって入ってくのにさ、そんなにきゅうきゅう締め付けてたら指抜けないぜ?」 「んぅう…、指でもいいんです…ナカぐちゃぐちゃにして…」 「欲しがりさんめ」  指をくいっと曲げられる。それは私のなかをかき乱して快楽を与えていった。まだ男の扱いを知らないガルはいいところを探し当てるまでに時間を食っていたがそれでも少しずつ答えに近づいていく。 「このへん?」 「も、もう少し内側…」 「ここか!」 「あっ!そ、そこです…!そこ、ぐりぐりって…」    答えはすぐに導き出されて私は大きく跳ねた。何度も擦られ、押し込まれしきりに声を上げる。 「ぅあ!…ん、あっ!あぅ…」 「やっぱココ、気持ちいよな。俺もなんかうずいてきちゃうぜ」 「ふふ、じゃぁ代わりますか?ぅあ…!」 「やだね、今は可愛い彼氏見る方がムラムラすっから」  可愛いと形容されることに羞恥心が掻き立てられたが同意してしまう自分もいたため反論できずに諦める。好きな人が自らの行動で感じてくれるというのは最高に興奮するものだからガルを咎められない。 「うう…」 「あー、すっげぇそそるわぁ」  快楽に溺れ、先走りを溢れされながら彼氏を見上げている。私が逆の立場だとしたらガルと同じようなことを言うだろう。満足そうなガルの顔を見ていると私まで満たされていく気がする。 「ぅあ、も、もう…」 「俺もそろそろ挿入れたいって思ってた」  腰を掴まれ心臓が跳ねる。今から入れられるんだ。――ガルに堕とされる。 「ぁあっ!まっ…!!」 「欲しがったのはどっちだ、よ…!すっげ…」 「あぁあ!!い、いきなりそんな…奥まで…!」  ずん、と奥まで突き込まれて声が裏返る。急に入れられることはしょっちゅうだったが今回に至っては初めてに近しいものがある。彼氏にされているんだ、感じたくなかったとしても感じるに決まってる。 「なぁ…うぉん。俺が初めてしたときに言ったこと、覚えてるか?」 「…?な、なんですか?」 「”女とシてもイけねぇ”って」 「ああ…言ってましたね」 「お前となら、イけそう」  それがどんなに嬉しいか。私で感じてくれている。それ以上に嬉しいことがあるだろうか。どんな女性でも気持ちよくなれなかった彼が私に入れただけで絶頂できそうと言うのだ。私はなんて幸せ者だろうか。 「是非、私のナカで…イってくださいね」 「まかせな」  一瞬見つめあいアイコンタクトをして一呼吸つくとガルは腰を揺らし始めた。慣れたようなその動きは私を高めるには十分だった。 「ん、ぁ!は、はは…流石、慣れて、ますね…っ」 「うっせ~、そっちだって慣れてるくせに」 「慣れてませんよ、貴方には」 「…っ!じゃあ俺だって!」  汗だくになりながら二人は互いを求めあい、貪った。快楽を果ての果てまで食らいつくそうと必死で食いついて、乱れて。 「ぁう!そ、そこ…っ!そこいい!!」 「おっけ~、覚えたっ…から!」 「あああっ!こ、こんなの、すぐ、イッちゃ…」  ギシギシと音を立てて沈み込む。 「イケよ。何度だっていいぜ」 「やだっ…!貴方はまだ…!」  快楽が強すぎて涙が溢れてきた。我儘を言いながらしがみついて涙で彼を濡らしていく。まだイきたくない。一緒がいいと首を振った。 「大丈夫、俺だってすぐだ」  真っすぐ彼を見つめると彼も余裕はなさそうだった。荒い息を吐いて、獣のように貪っているのは私だけじゃない。 「ぅあ!い、イクっ!イきます…!」 「くっ…」  早すぎる。でも仕方がなかった。最愛の人に抱かれているのだから。それに限界だったのは私だけではない。 「ぅあ!!イク!イッってるっ…!!」 「っはは…。きもち…なんだこれ…」  余裕そうにふるまってはいるが腰をがくがく揺らしながら私の中で達している。よほど気持ちがよかったのだろうがそれについていけず、ぎこちない表情と声になっていた。余韻を少し楽しむとふわりと彼が抱き着いてきた。 「これ、やべーな」 「やばいでしょう?癖になるの、わかります?」 「わかるわ…」  初めて夜を過ごした日から何度も体を重ねているが飽きもしないで何度も抱くのは癖になっているからだ。 「はぁ…気持ち良すぎて…」 「まだ一回だぜ?まだいけるだろ?」 「その前にクーラーつけましょう、暑くて死んでしまいます」  今年の夏も暑い。流石に何度も抱き合っていてはのぼせてしまう。 「わかった、クーラーつけたら二回戦な」  ピッという音とともにクーラーが動き出す。涼しい風が私たちを包み始めるのを確認したらもう一度彼に向き合った。 「ばてるなよ~?」 「そっちこそ。今日の私は貪欲ですよ」  夏の夜はまだ終わりそうになかった。

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