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第8話

○●----------------------------------------------------●○ ↓現在、以下の2つのお話が連載中です。↓ 毎日昼の12:00時あたりのPV数を見て、多い方の作品をその日22:00に更新したいと思いますmm ◆『君がいる光』(幽霊×全盲の青年 ) https://youtu.be/VPFL_vKpAR0 ◆『春雪に咲く花』(探偵×不幸体質青年) https://youtu.be/N2HQCswnUe4 ○●----------------------------------------------------●○ ※R-18描写あり 光の結晶がチカチカと瞼を差す。 目を開けると、見たことのある光景の中で、仰向けに寝転んでいた。 緑、雲、空。 春海は手を伸ばす。頭上にある空は掴みきれないほどに大きく、こちらの目が染まってしまいそうなくらいの青に輝いていた。周りの梢は風にのってさわさわと葉を揺らし、その度に春海の肌に柔らかい緑の影をおとす。 寝そべった身体の下では、青草が風にのって香り立ち、時折花を求めてやってくる蝶や蜂が視界をかすめる。耳を澄ませると、どこかから小鳥の鳴き声も聞こえてきた。 ──完璧な世界。五感でとらえられる完全なる世界。 だが、何かが足りない、とふと思った。 そうだ。自分にこの光景を見せてくれた張本人がいないのだ。 「……久周」 小さく呟くと、ふっと影が顔にさした。 目を開けると、一人の男が隣に座っていた。片手を春海の肩の脇にある下草に置き、覗き込むように上半身を傾けている。 その白い生成りのシャツは陽光に透け、布地の下の肌色と引き締まった体格を露わにしていた。色の薄い髪はライオンのような黄金色に輝いている。顔は逆光で見えなかったが、どこか見覚えのある姿だった。 「久周……?」 かすかに唇を動かして聞くと、相手はこくりと頷いた。 「春海……」 囁くような声は深く柔らかかったが、かすかに不安で揺れていた。 「……ごめん。本当はこんなことしてはいけないのに……でもお前が、呼んでくれたから——」 ふっと久周の顔が近づき、唇が重なる。それは春風のように優しく、柔らかいキスだった。 満足の吐息が、春海の喉から自然にもれる。 まるで夢のようだ。 (……夢? そうだ、これは夢だ!) でなければ、自分の目が見えている訳もないし、久周がこんなことするはずない。何よりも幽霊であるはずの彼の唇の感触を、こんなに鮮やかに感じるはずないのだ。 春海の身体から、ふっと緊張の糸が解けた。 夢ならば、何をしたっていいじゃないか。今まで現実世界の中で散々我慢してきたのだ。夢の中でくらい自由になってもバチはあたらない。そうだろう? 春海は相手の唇を受け入れるように、自らも唇を突き出す。一瞬びくりと震えた久周だったが、すぐに両手で春海の顔を覆い、さらに唇を進めてくる。 久周の唇は春海の輪郭を確かめるように、下唇から上唇までそっと丁寧になぞっていく。 「ふっ……」 頭がくらくらした。 正直言って、こうゆう経験は初めてだった。 とうの昔に、自分はこうゆうこととは無関係だと悟っていた。 なぜって誰が好きこのんで、盲目の男を好きになる? 自分のことすら満足にできない男の世話をわざわざ買ってでる? 答えはノーだ。 春海にとって、恋愛は何億光年も隔てた別の星のものだった。 そのため当然ながら、こうゆう経験もない。AVすら見たこと(聞いたこと)ないし、わざわざそうゆうサイトを機械で読み上げるまでの勇気も熱意も持っていなかった。性的なものとはまったく無縁の生活。本当に必要な時にだけ、自分で処理するのが精一杯。 たぶん、中学生の方が知識も経験も遥かに春海よりは成熟しているだろうと思うくらいだ。 「大丈夫。傷つけるようなことはしないから」 春海の心を読み取ったかのように、久周が顔を上げ、こつんと額と額を合わせてきた。 「気持ち良くなるだけだから……いいか?」 何が「いいか?」のかわからなかったが、気がつく前に頷いていた。 唇が再び重なる。どちらからかわからない。だが、それがわかる前に、春海の意識は全部、久周の与えてくれるキスに持って行かれていた。 久周の舌が歯列を割って、そろりと入ってくる。今まで経験したことのない未知の感触に、腰がびくりと浮く。久周が宥めるように春海の耳元の髪をまさぐり、舌をさらに奥に進めてきた。 「んっ……ふっ……」 促されて息継ぎをする度、切なげな吐息が喉からもれる。鼻先いっぱいに久周の匂いが広がり、頭がくらくらしてくる。 春海は自分でも知らないうちに、舌を返していた。口内で互いの舌がゆるくぶつかり、体温を共有するかのように一つに溶け合っていく。 春海はじんじんとした熱が自分の腰に集まってくるのを、無視できないほどに感じていた。知らず腰が揺れる。 くすりとからかうような笑みが聞こえ、久周が自分の腰をぶつけてきた。太もも脇に、硬い久周のものの熱を感じる。 「あっ……!?」 するりと久周の手が春海の浴衣の裾を割って、中に入ってくる。広く大きな掌が膝から太ももをゆっくりと這い、さらに上——春海のゆるく勃ち上がったものを握り込んだ。 「んんっ……!」 久周の大きな手がゆっくりと上下する度、びりりと全身に電流が走る。自分で触るのとはまったく違う感覚に、目がくらくらしてきた。 そのまま再び唇を奪われ、さらに下を扱かれるスピードも速くなる。 「あっ、やっ……久周もっ……一緒にっ……」 自分だけが翻弄されるのは不安でいたたまれず、久周のものに手を伸ばそうとする。 が、寸前で難なく止められてしまい、代わりに組み伏せられる体勢にされてしまう。軽く汗ばみ、薄い微笑みを浮かばせた久周の顔が近づく。 「それなら、こうしよう」 「……ッ!?」 足を大きく開かれ、疼きよりも激しい灼熱を感じた。驚いて見ると、勃ち上がった自分のものに久周の太いものがぴたりと寄り添っていた。自分のものを見るのも初めてだったが、他人の膨張したものを見るのも初めてだった。 恥ずかしさから、腕で顔を隠す。 「ダメ。ちゃんと見てて。ちゃんと見せて」 久周は春海の腕をその頭の上でまとめ上げると、もう片方の手で二人のものを握り込み、一緒に扱き出した。 「あっ、く……」 熱い。熱い。二つのものの皮膚が擦れ合う度、火花のような熱が生まれる。じんじんと増していく疼きとともに、春海は切ないほどのもの足りなさを感じた。 ——もっと久周に触りたい。 さすがは夢というべきか。久周は春海の欲望を正しく感じ取り、制していた春海の手を互いのペニスの上に導いた。春海の掌の下で、どくりどくりと二人分の脈動を打つ。 「好きなように動かして。大丈夫。俺も一緒だから」 久周の大きな手が春海の手に重なり、二三回、促すように上下する。全身に伝播する甘い波に、春海はヒュッと息を飲んだ。 自分の見ている光景がまるで信じられなかった。久周とお互いのものをこすり合わせているなんて。 もっと驚いたのは、自分がそれを嫌だと思っていないことだ。いや、嫌なんてものじゃない。空の青、雲の白さ、緑の葉。今の行為はそれらのものと匹敵するくらい美しく、自然なもののように感じた。 春海は自分と久周のものにかかる指に力を入れ、導かれるまま手を動かす。 「くっ……いいぞ、そのまま」 久周が春海の耳元で、短い呻き声をもらした。 彼も感じている。 そう思った瞬間、わずかに残っていた春海の理性もたちまち崩れた。自分と久周の快楽のありかを探して、ひたすら手を上下させる。久周の手が、さらにそれを煽っていく。 「んんっ……あっ!」 じわじわと迫ってくる快楽の波に耐えきれず、春海はぎゅっと目をつぶった。 「春海、俺を見て」 吐息のような囁きが耳元で聞こえ、薄く目を開ける。 ぼんやりとした視界の中で見える、久周の表情は真剣そのものだった。瞳の中には情欲の炎がちらちらと燃えていたが、口元には何とも言えない寂しげな笑みが浮かんでいた。 春海は衝動にかられ、相手の首に片腕を回すと、ぎゅっと抱き込んだ。 「大丈夫。見てる。見てるからっ……!」 長い安堵の吐息を頬に感じた。次の瞬間、久周の手がさらに速くなり、動きに合わせて腰まで打ちつけてくる。 「あっ……もう、ダメっ……!」 経験したことのない強い快楽に、春海はもはや何も考えられなくなった。久周の力強い拳と腰の動きに合わせるように、自らも動かす。 「……ッ、俺も、もうダメだっ……!」 久周が痛いほどギュッと互いのものを握り込んだ瞬間、春海の目の奥で白い火花が散った。

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