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第13話

「旭、手。枕の下に入れて動くな。」 低く、それでいて甘い。大好きな声が耳に心地いい。 まるでその声は導いてくれるようで、緊張でがちがちになった旭をやさしく諭す。 「ひっ…んっ、」 突然ぞわわっと腰が逃げるような感覚が襲い掛かり、本能で柴崎に従う。多分、これから何かとてつもないことが起きるに違いない。 なんだか手に握る生地の感触がやけに鮮明で、返答代わりに枕に噛みついた。 「いい心がけだ。」 何が、とは言えず、悔しくてちらりと盗み見た。 頬を染め、息を上げる。雄の本能剥き出しの様子に戸惑いと、わずかな優越感。 柴崎さん、あんた俺で興奮してんの。 じゅわり、と唾液がシーツに染み込む。下腹部に溜まったおもだるい熱に理性が焼かれそうになる。 「っ……。」 ぐぷり、と音を立てながら指が抜かれた。 さっきまで痛いだけだったのに、抜く際にいたずらに押された内壁が熱く、じんじんと響く。収縮を繰り返す孔を褒める様に、淵を優しくなでられた。 「ゆっくり呼吸しておけよ。」 閉じられた瞼に優しく口づけられ、かっと体が熱くなる。足を抱え上げられ、あらわになったひくつくそこに押し付けられた熱量が呼吸に合わせて侵入してきた。本来ならば、用途が違うつつましい窄まりが、この男によって性器に変えられる。 男としての尊厳なんてすでに無い。 今はただ体の熱を取り除いてほしくて、そんな自分がなんだか情けなくてほろりと涙が流れた。 「ぁ、うそ…ぉ…」 「っはぁ…きつ、」 柴崎によってやさしくほぐされた内部は、旭の呼吸に合わせてゆっくりとそれを飲み込んでいった。 淵が限界まで引っ張られ、痛くて苦しくてこんなにも辛いのに、侵入してくる柴崎自身が泣きそうで、なんだかかわいそうになった。 泣かないで、大丈夫だから。いいよ、もっと。 旭を撫でる手に指を絡ませ、あやすように指先に口づける。 ぐっ、と眉間にしわを寄せながら、何かを我慢する表情がかわいい。この男は、可愛い。 おなかは苦しいのに、限界まで広げられたそこは、なんだかじんわりむず痒く、おいしそうに柴崎を飲み込む。 やがて根元まで収まりきると、頑張ったね、とお互いをいたわるように口づけを交わした。 「おれ、おとこなのに」 「男なのに?」 「こんな、っ…へん、」 こんな腹の中から作り変えるような感覚、へんだ。 「へんじゃねーよ」 じくじくと存在を主張する痛みは、いつしか腹の奥が切なくなるような甘い感覚に変わった。 ちゅ、ちゅ、と甘く唇を啄まれながら優しく髪を梳かれる。まるで愛されているような感覚になってしまう。これはなんだかとっても、駄目になってしまいそうで怖い。 「やさしい、こわい…」 「馴染むまで待ってんだ。手ぇ首に回せ。」 まるでエスコートされるかのように回された手は、そのまま体をくっつけるように引き寄せられる。 「ぁ、やだ…っ」 「嫌になったら、殴れ。」 ずるい、そんなの出来るわけないじゃないか。 抗議しようかと思ったが、極まりが悪くて飲み込んだ。 「あぁっ…!?」 「ふ…」 ずろりとリアルな形を感じながら引き抜かれたかと思うと、内側の小さなしこりを押しつぶすように突き上げられた。 「ひゃ、い…や」 まるで、直に神経を撫でられているようなぞわ…とした痺れが襲う。 自分の中からずる、と抜き差しされる肉の感覚にめまいがしそうだ。 「ぁ、ら…めぁ…っ」 「はー…」 「と、め…」 「は、」 こいつ全く聞く耳を持たない! ひゃんひゃんと今まで出したことのない情けない声がいやおうなしに口からこぼれる。 ぬぱ、と粘着質な音を響かせ、大好物を抱え込むように抱きしめ律動する目の前の男の背に気が付いてほしくて爪を立てる。 押し上げられるたびに、全身の神経がフル活動するように敏感になり、喉からはひっきりなしに嬌声が上がる。 俺ってこんなに甘ったれた声出るんだなぁなんて思考の外側で自分が傍観している。 「ぁ、あや…っいやだ…」 「やじゃない。」 「とめへ…ぇっ」 「止めない」 合いの手かよ。と思うくらいああ言えばこういうこの男は、さっきから首筋だの肩口だのをかぷかぷかわいらしく噛みながら責め立ててくる。 抜き差しされ、摩擦を繰り返されるそこは、馬鹿みたいに吸いついているのが自分でもわかるし、求められるように揺さぶられる体は、柴崎の肌に吸い寄せられるようにくっついて離れない。 「んや、ぁあも、ひ、いぃ…っ」 「旭?」 「い、ぃよぉ…も、ぁげる…」 「あさひ…っ」 「ぜ、んぅ…あげぅ…」 回された腕に力がはいいったかと思えば、きゃんきゃん泣いていた旭が俺を見つめて笑った。 いわゆる泣き笑いというやつで、文章でしか知らなかった表情を次々と見せてくるこいつに、征服欲を刺激される。 なんかもう、気持ちよさ過玉がバカになりはじめた頃には捕えられていた。 「きもひィ…」 「そりゃ重畳。」 背に手を回し包み込むように抱き寄せ貪る。 さっきから力が入らないのかゆすりあげるたびに揺れるほそっこい足を掴み広げてやると、びゅくりと熱いものが腹に撒かれた。 「は…まじかよ。」 「ぁー…」 だらしなく開かれた口から、とろりと唾液を垂らす旭を見やる。薄い腹はひくひく痙攣して、俺とこいつを繋ぐように粘性の高い白が腹を伝っていた。

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