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第31話

「お前は舐めてるだけでいいわけ?」 「くち、さびしい」 「とろとろにしちゃって、相手にしてもらえないここのが寂しそうだぞ。」 「ぅ、ひ…っ」 ぐちゅ、とぬめるような音を立てながら握り擦られた先端への刺激に、とぷりと透明なものが零れた。マッサージをするような手の動きに合わせ、呼応するようにとぷとぷあふれる液体が何よりの答えだ。 そして、息継ぎの合間に出てしまう甘い声のせいで、柴崎の瞳が細められるのもすべて。 あぁ、俺はこの人に頭からバリバリ食われたいのか。なんて化け物扱いをしてしまうくらいには、柴崎の獣じみた瞳に、腰が震えた。 「ぁ、あ…んぁ…っ!」 「甘イキきもちいいな?顔もここも素直なのに、言葉にしてくんねーの?」 「お、おれ…ぇ、」 「なめてやっからケツ寄越せ。」 「ぇあ!?」 抱えあげられた足を倒されるように無理やり体制を変えられる。自分の膝が目前に来る体制に、俺って体柔らかかったんだなぁ、などと変な所へ思考が逃げた。 何故なら記憶にある限りでは、乳児の頃にしかやらないような、恥部を相手の目前に晒すいたたまれない体制だったのだ。 「こ、れ…これや、…んひ…っ!」 「いやいや期かよ。」 ふ、と呟いたかとおもえば、熱い吐息とともに柔らかく湿った感触が旭のつつましやかな蕾に触れた。ちゅ、ちゅっ、と数回あやすように口付けをされたのち、押し付けるかのように這わされた熱いぬめりが柴崎の舌だと気付くころには、旭の雄芯からぶぴゅりと情けない音を立てながら射精していた。 「んン、は…舐めて…は、…イくとか…童貞?」 「そ、これ…ひゃべ…ンやぁ…あっン」 ぬぽぬぽと旭を見つめながら出し入れされる熱い舌が視覚的にもキてしまった。 なんか、これはだめだ。背徳感がやばい。 顔を隠すように両手で覆う。指の隙間からわずかに見えた柴崎は眉間にしわを寄せひどく興奮したように旭を見つめていた。 「くそかわ。」 ぬる、と縁を引っ掛けるように舌が抜ける。性器と後口のあわいをべろりと舐めあげられれば、溢れるような吐息とともに先走りが腹を汚した。 まるでそれを合図にするかのように舌から指へシフトチェンジされる。一度ひくりと柴崎の指を締め付けたが、その頃にはすでに旭は出来上がっており、無意識に腰を揺らしながらだらしなく腹を半透明な液体に塗れさせていた。 「やばい指がふやけたうける。」 「ぉ…ぁ、は…」 「旭?おーい。やべ、やり過ぎた。」 口端から垂れた唾液を舐めあげ、咥内に侵入し絡ませる。引き抜いた指は旭の薄い腹に飛び散った液を塗り込むように腹にのばしながら意識を捕えさせ、コクリと二人分の唾液を嚥下した様子を感じれば、半覚醒状態まで戻ってきた旭を抱き込んだ。 「理人」 「ぁ、い…」 「2度目、今度はきちんとしよう。」 「ふ、ぅ…うっ」 なんでそんな甘ったるい顔するの、ぼやけて見えるのは俺が泣きそうだから? 旭は額を重ねて甘く見つめてくる瞳を捉え、涙でふわふわと揺れる視界の中、答えるように柴崎の頬に手を添えた。声を出したい、なんて言えば伝わる?でも思考がまとまらない。雑念が返事の邪魔をする。 でも、旭は素直になろうとした。自分が自分じゃなくなったりするのは、全部この人のせいだから。 こんな甘い気持ちを自覚させ、更に旭を馬鹿にさせた、遅効性の毒のような人。 だから、責任をとってもらわなくちゃ。 「全部…もらって、」 なけなしの勇気を奮って紡いだ言葉は、飲み込まれるようにして塞がれた。 「ぁ、あ…ま、まっへぇ…っや、」 「ふざけろマジでぐずぐず泣きやがって!」 乱暴な言葉遣いとは裏腹に、旭の心は酷く喜んでいた。こんなに、求められるということは満たされるのか。 足りない部分にピタリとハマるように、その隙間はこの人の形をしていた。 胎内の摩擦がこんなに体を溶かすとは知らなかった。この男の手で。男の自分が雌にされていく、そんな瞬間。 「ひ、ぃいや、っ…こわ、いぃ…っ」 「おまえ、がっ…わるい、だろうが…っ」 ぎしぎしと壊れてしまうんじゃないかと思うくらいの音を立てながらベットがきしむ。 柴崎は的確に旭の喜びを感じ取っていた。あさましく、依存性のある声で甘く啼く、こいつは俺で満たされているのだと。 可愛かった後輩が翻弄してくる。奥へ奥へと求めていくうちに、これは両思いよりたちの悪いものだと自覚した。 「ぐ、ぅ…つ…」 ぐる、と獣のように喉が鳴る。独占欲は強く現れる。 何かのスイッチをぶち抜いてしまったらしいが、性急な腰遣いに目の前が真っ赤に染まるくらい気持ちがいい。今度こそ頭が真っ白だ。 分かっていることは、抱え込むようにして抱きしめてくる柴崎の熱い腕と、甘く香る汗の匂い。 完全に股関節は馬鹿になり、さっきからぷらぷらと律動に合わせて情けなく揺れる足が、なんだか自分のじゃないみたいで不思議だった。

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